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校注・破邪詳弁 〈中国民間宗教結社研究資料〉

澤田瑞穂編著
清代の地方官が庶民教化のため「邪教」経典を博捜し、一つ一つに弁駁を加えた書。弥勒白蓮教系68経巻の要旨を収めた、明清宗教史研究の根本資料。翻印に、句点・標点を施し、校注を加えた決定版。解説付き。
A5判・上製函入・266頁・本体7000円
1972年3月25日発行
ISBN4-938718-89-8
目次
解説より
編著者紹介

目次

 解説
 校注例言

重刻破邪詳弁序
破邪詳弁序

破邪詳弁巻首
 聖論十六条・聖論広訓
 律例禁邪類摘録
  褻涜神明 禁止師巫邪術 盤詰姦細 謀反大逆 謀反 造妖書妖言
 王法中白陽教案
 尹資源離卦教案
 吉三白大乗教案
 厳査保甲上論

破邪詳弁巻一
 古仏天真考証竜華宝教
 銷釈悟性還源宝巻
 開心結果宝巻
 下生嘆世宝巻
 明証地獄宝巻
 科意正宗宝巻
 帰家報恩宝巻
 護国佑民伏魔宝巻

破邪詳弁巻二
 混元紅陽顕性結果経
 混元紅陽大法祖明経
 混元紅陽血湖宝懺
 混元無上大道元妙真経
 苦功悟道巻
 正信除疑無修証自在巻
 巍巍不動太山深根結果巻
 嘆世無為巻
 破邪顕証鑰匙巻
 姚秦三蔵西天取清解論
 普静如来鑰匙通天宝巻
 普明如来無為了義宝巻

破邪詳弁巻三
 八字真言
 真空家郷
 無生父母
 歛銭上供
 上表
 掛号合同
 開場考選
 男女混雑
 行好・進香
 伝徒歛銭
 無字真経・一字真経
 斬決上天
 邪経妖妄
 紅陽劫
 五方五姓
 十二卦
 九宮・天盤・地盤・奇門
 十八時
 釈迦掌世・弥勒掌世
 納音説
 天文説
 上古帝王
 上古神仙
 無生転世
 転生説
 地名虚実
 邪経と演劇
 天門開放・当人出竅
 詳弁著作の趣意
 保甲条例
 禁邪と保甲
 書院・義学
 宣講聖輸
 後序

続刻破邪詳弁序
続刻破邪詳弁一巻
 三義護国佑民伏魔功案宝巻
 泰山東獄十王宝巻
 地蔵菩薩執掌幽冥宝巻
 霊応泰山娘娘宝巻
 護国威霊西王母宝巻
 仏説離山老母宝巻
 千手千眼菩薩報恩宝巻
 銷釈白衣観音菩薩送嬰児下生宝巻
 仏説弥陀宝巻
 救苦忠孝薬王宝巻
 仏説梁皇宝巻
 銷釈孟姜忠烈貞節賢良宝巻
 仏説如如老祖宝巻
 仏説無為金丹揀要科儀宝巻
 仏説明宗顕性科儀
 仏説通元収源宝巻
 普度新声救苦宝巻
 銷釈授記無相宝巻
 銷釈大宏覚通宝巻
 銷釈印空実際宝巻
 銷釈金剛科儀
 仏説大方広円覚修多羅了義宝巻
 仏説三廻九転下生漕渓宝巻
 仏節黄氏女看経宝巻
 仏説伝燈心印宝巻
 皇極金丹九蓮正信皈真還郷宝巻
 邪経と仏説
 天地・人身・年歳・地獄・仏祖
 邪教陰報録
 刑罰説
 謀逆と劫数
 保甲再論
 広沢書院
 地獄説利用の意義
 後語

又続破邪詳弁序
又続破邪詳弁一巻
 混元紅陽臨凡飄高経
 混元紅陽悟道明心経
 混元紅陽嘆世経
 混元紅陽苦功悟道経
 混元紅陽明心宝懺
 混元紅陽抜罪地獄宝懺
 混元紅陽救苦升天宝懺
 混元無上抜罪救苦真経
 混元無上普化慈悲真経
 紅陽宝懺中華序
 銷釈闡通救苦宝巻
 観音釈宗日北斗南経
 勅封劉守真君宝巻
 銷釈地獄宝巻
 東獄天斉仁聖大帝宝巻
 金闕化身元天上帝宝巻
 福国鎮宅霊応竈王宝巻
 仏説皇極収元宝巻
 仏経と邪経
 啓建道場・誦経上供
 全  神
 直上天宮・永不下世
 邪経に証拠なし
 後  序

三続破邪詳弁序
三続破邪詳弁一巻
 苦功悟道巻略解
 悟道心宗覚性宝巻
 銷釈収円行覚宝巻
 銷釈真空掃心宝巻

附 録
 一 龍華経の研究
 二 『衆喜宝巻』所見の明清教門史科
 三 清代教案所見経巻名目考

あとがき
索  引

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解説

(抜粋)


 明の末葉から清代にかけて各地に発生しそして消滅していった民間の諸教門──いわゆる弥勒白蓮教系の「邪教」──の実態を知るためには、これを外側から捉えた官憲の諸記録だけでは充分でなく、一面には、これを内側から伝えるその教門の経典類を資料として利用しなければ偏見に陥る。官憲の記録が、初めから偏見によって書かれている場合が多いからである。ところが、その大切な内的資料たる経典類は、官憲により「邪経」と見なされ、獲るに随って押収され焼毀されてきたので、幸に湮滅を免れて今日まで伝わる経巻の数は少なく、たとえ現存していても、特殊な資料だけに、そう手軽には利用できない状態にある。
 清の道光中期に、直隷滄州の知州に任ぜられた黄育●[木+便]の『破邪詳弁』六巻は、その任地で捜索した六十八種の経典を著録し、必要な語句を引用して逐条弁駁を加え、さらに「邪教」の教理教説を分析し、結論として、これらをすべて信ずべからざる虚捏妖妄の言と極めつけたものである。地方官としての立場からきた黄氏の「破邪」の態度や方法については、もとより今日の客観的な歴史研究の立場からの批判を免れることはできないが、少なくとも明清教門史上の貴重な根本資料を、かくも豊富に探索し叙録し論評した点では、まさしく明清を通じての唯一無二の専著であると称しても過言ではない。
 本書の史料的価値については、つとに歴史学者の向達氏が、民国二十三年(一九三四)に「明清之際之宝巻文学与白蓮教」という題で紹介して以来、この方面の学者の注意を惹くようになり、宝巻著録の書、たとえば傳惜華氏の『宝巻総録』や、胡士瑩氏の『弾詞宝巻書目』や、李世瑜氏の『宝巻綜録』が本書を基礎資料としたことはいうまでもなく、周作人氏も「無生老母的信息」という文章で、やはり本書の記事を材料として抄出している。近年の『歴史論叢』第一輯に収められた熊徳基氏の「中国農民戦争与宗教及其相関諸問題」という論文でも、随処に本書を引用しており、今や明清の宗教史・社会史の研究者にとっては必須の資料となっているのである。
 本書に著録する経巻六十八種のうち、近年の調査で、すでにその現存および収蔵者の判明しているもの四十七種、存否不明のもの二十一種。すなわち全数の約三分の一は、ただ本書によってのみその題名と内容の一斑とを知ることができるのである。勿論、本書に著録されたのが「邪経」のすべてではなく、これ以外にもかなりの数の経巻が発見されているから、本書は決して「邪経総目提要」とは言えないが、重要なものが多く著録されているばかりでなく、各教門の所説を要約した通論のような部分もあるので、今日なお貴重な参考書たるの価値を失っていない。
 日本でも本書のことは宝巻と共に紹介され、この方面の研究者なら一応は書名を知っているはずであるが、実際には研究上に本書が活用されているとは言えない。その理由は簡単である。活用したくても、日本では本書の六巻全部を蔵する人がいないらしいからである。
 本書の版本には二種ある。一は道光十四年以降、北京琉璃廠西門内の五雲堂で四回に分けて刊行した原刻六巻本。二は光緒九年(一八八三)に宗室祥亨の序を冠した荊州将軍署重刻本で、これは五雲堂本と頁も款式も一切が同じで、五雲堂の原版をそのまま使用したか、もしくは写刻したかと思われるもの。ただし用紙や墨色は同じではない。
 わたしは、かつて北京にいた時、本書の北京原刻本全部と、「又続」以下の欠けた荊州重刻本の四巻との二種を蔵して、宝巻蒐集の際の台帳として愛用していた。一時日本に持ち帰って、二度めに北京に渡るとき、不完全な重刻本は遺し、原刻本のほうを持って行った。終戦で持ち帰りはできなかった。帰国後の研究は、不完全な四巻本に拠るのほかはなく、つねにこれを遺憾としていた。ところが、昭和四十年、天津に住む『宝巻綜録』の編者李世瑜氏と連絡がついたので、『破邪詳弁』のことを手紙に書き、何かの方法で不足分を見ることができるように便宜を図って欲しいと頼んだところ、幸に李氏は「又続」以下を人に手写させ、それに李氏自身が校訂を加えたものを送ってくれた。刊本でも写真版でもないが、とにかくこれで六巻全部がそろって、やっと二十年来の渇を療すことができた。そこで、これを機会に本書の校注本を備えておきたいと考え、改めて全文を筆写し、校訂し、注を加えて一部の稿本にまとめたのがこの校注本であり、以下に述べるのは、この校注の作業から得た本書に関する考証と評価とである。

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著者紹介
澤田瑞穂(さわだ みずほ)
明治45年、高知県生まれ。國學院大学高等師範部卒。
現職、天理大学教授
専攻、中国文学
著訳書、『中国の文学』(学徒援護会)、『宝巻の研究』(釆萃書林)、『地獄変』(法蔵館)、『列仙伝・神仙伝』(平凡社・中国古典文学大系8)その他

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