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台湾原住民研究 第3号

日本順益台湾原住民研究会編 かつて「高砂族」と呼ばれた台湾先住諸族の研究誌。漢化と近代化の波に呑まれ、消失・変容しつつある多様なその文化を、人類学の立場から考究、紹介。論文・資料・調査報告・エッセイなどを含む関連情報の拠点。
A5判・並製カバー・324頁・本体2000円
1998年12月20日発行
ISBN4-938718-97-9
目次
國分直一「台湾山地開発と隘勇隊(防衛戦)」より
執筆者紹介

目次

[論文]
台湾山地開発と隘勇隊(防衛線) (國分直一)
蜉蝣の認同、祖先からの出奔──漢族でもなく、シラヤ族でもなく(1) ( 山路勝彦)
伊能嘉矩の時代──台湾原住民初期研究史への測鉛 (笠原政治)
「ヤミ族とは何処の部族なる乎」
   ──フィリピン側の資料に基づいたヤミ族 (森口恒一)
台湾アミ族の空間認識 (原 英子)
台湾原住民の辮髪 (小林岳二)

[研究ノート]
事件を記述する──プユマ族の災因論の多面性をめぐって (蛸島 直)
「サイシヤット」の民族名称に関する一考察 ( 陳 文 玲)
「駱駝、葡萄、偽善者」 (土田 滋)
南勢アミの食用資源植物 (長沢利明)
岡田信興〈阿里山蕃調査書〉を読む (宮岡真央子)
石井眞二とJ・G・フレイザー
   ──台湾原住民研究とイギリス人類学の出会い 素描 (山田仁史)
台湾原住民研究史のエピソード──動物民俗研究者金子総平 (許進発)
今日における台湾の民族を巡る政治について (石丸雅邦)

[資料]
中国大陸における台湾原住民の研究と所蔵文物 (索 文 清)
English Index of the Siraya Vocabulary by Van der Vlis (土田 滋)

[短信・書評]
呪医シカワサイの序列と組織への強調 (原英子)
幻の原住民博物館 (長沢利明)
サイシャット族の村の風景から (中西裕二)
書評:李福清(Riftin, B.)著『從神話到鬼話:台灣原住民神話故事比較研究』 (山田仁史)
我部政男・栗原純編『ル・ジャンドル 台湾紀行』 (末成道男)

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台湾山地開発と隘勇線(防衛線)
(一部紹介)

國分 直一


はじめに──新植民地開発と避けられなかった問題について
 わが領台に際して、最も緊急を要した問題は台湾籍民との同和を進めることであったが、同時に、馘首──head huntingの習俗を根強くもっていた原住諸族の順化を進めねばならなかったことである。後者の場合、山地縁や海岸地区に居住していて、清朝時代に漢化の進められていた平埔族、あるいは熟蕃とよばれていた温順な農耕民については、制圧を加えねばならないような問題はなかった。しかし山地地区及び東部の山地縁地区を占拠していた原住民については、管制を進める上で、困難な問題が出現するのである。
 それらの地区にしても、原住民の生活領域に立ち入らない場合には問題がおきないのであるが、立ち入る必要がある場合には、彼らの抵抗が必至であることから管制上の問題が出現することになるのである。
 当時、興隆期のわが経済界が有用な建築材や樟脳の原材となる樟樹の原生林に富む北部、中部地区の山地開発に期待をもたなかったはずはなかった。
 領台初期における山地開発、そしてそれに附随することになる住民をめぐる処置は殖産局の管轄下におかれていたのである。
 筆者が本稿においてまずとりあげようとするのは、領台初期における山地開発と、開発に際しての原住民の抵抗、抵抗に対する防衛、進攻、襲撃に対する応報討伐がいかに行われたかについてである。
 幸いに以上の諸問題については、台湾総督符から刊行された文献が遺されている。
1911(明治44)年に総督符殖産局蕃務本署から刊行された“Report on the control of the aborigines in Formosa.”なる英文報告である1。
 直訳すれば、「台湾原住民の管制についての報告」となるが、本稿では、この報告に言及する場合、簡約して「管制報告」とよぶことにしたい。
 蕃務本署が殖産局に所属していたことは、原住民管制の問題が、山地開発に結びついていたことを語っているものといえよう。
 1911年刊行のこの報告について、従来、かつてかえりみられたことがなかったのは、山地開発と原住民管制の問題が、とり上げられることがなかったことによるものではなかろうか。
 本稿では1911年刊行の報告を通して、開発と原住民の抵抗、原住民の抵抗に対する管制の進められ方を見ていくことにする。
 「管制報告」においては、原住民をaboriginesと表現しているが、諸所にsavages(蛮民・蕃人)なる差別用語を用いている。大正期に刊行された原住民の旧慣報告においても清朝以降慣用されていた蕃族なる用語が使用されている。本稿においても、やむをえない訳出の場合には、原報告に従っておくことにしたい。
 「原住民管制報告」は次のような構成となっている。

1 一般所見
2 蕃族管制小史
3 隘勇線簡述
 1 「隘勇線」なる用語
 2 その組織
 3 隘勇線の創設
 4 防衛員の配置
 5 防衛員の任務
 6 防衛員の雇用
4 防衛線の前進
 1 前進の困難
 2 前進部隊の組織
 3 同意をえた上での防衛線の前進
 4 蕃人の抵抗下における防衛線の前進
 5 防衛線の拡張
5 蕃人に対する応報討伐
 1 太魯閣社遠征
 2 五指山遠征
 3 大フヘにおける作戦
 4 マラギー社遠征
 5 南庄における作戦
 6 マナパン地区における作戦
 7 サオライ社作戦
 8 郡大社作戦
 9 太魯閣社作戦
 10 チカソワン社作戦
 11 チヤロギス社作戦

この後に次の4種の表がおさめられている。
1 原住民の集落と人口の表
2 警官駐在所と児童教育所表
3 蕃人による被害表

この後に地図と図表が附加されている。
(1)台湾の民族地図
(2)原住民の占拠を示す北部台湾地図
(3)原住民の占拠を示す南部台湾地図

 以上が1911年、台湾総督符殖産局蕃務本署から刊行された「台湾原住民の管制についての報告」の全項目である。
 最初の「一般所見」(General Remarks)においては、まず種族の分類があげられ、その後、原住民における根強い習俗、馘首(首狩り)について、特にタイヤルを中心にして詳説されている。
 本稿は以上の内容を示す「管制報告」によって、山地開発をめぐる問題、特に隘勇線と、それに伴う問題についてかえりみておこうとするものである。
(後略)

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執筆者紹介
國分直一(こくぶ なおいち) 梅光女学院大学地域文化研究所名誉所長
山路勝彦(やまじ かつひこ) 関西学院大学社会学部教授
笠原政治(かさはら まさはる) 横浜国立大学教育人間科学部教授
森口恒一(もりぐち つねかず) 静岡大学人文学部教授
原 英子(はら えいこ)     日本順益台湾原住民研究会
小林岳二(こばやし がくじ) 学習院大学大学院人文科学研究科博士後期課程
蛸島 直(たこしま すなお) 愛知学院大学文学部助教授
陳 文 玲(ちん ぶんれい)     東京都立大学大学院社会科学研究科修士課程
土田 滋(つちだ しげる) 順益台湾原住民博物館館長
長沢利明(ながさわ としあき) 東京理科大学非常勤講師
宮岡真央子(みやおか まおこ) 日本順益台湾原住民研究会
山田仁史(やまだ ひとし) 京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程
許 進 発(きょ しんぱつ)     東京大学大学院人文社会系研究生
石丸雅邦(いしまる まさくに) 岡山大学大学院法学研究科公法政治学専攻
索 文 清(さく ぶんせい)    中央民族大学教授
中西裕二(なかにし ゆうじ) 福岡大学人文学部助教授
末成道男(すえなり みちお) 東洋大学社会学部教授

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