台湾原住民研究 1
漢化と近代化の波に呑まれ、消失・変容しつつある多様なその文化を、人類学の立場から考究。論文・資料・調査報告・エッセイ等。
著者 | 日本順益台湾原住民研究会 編 |
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ジャンル | 定期刊行物 |
シリーズ | 雑誌 > 台湾原住民研究 |
出版年月日 | 1996/05/25 |
ISBN | 9784938718923 |
判型・ページ数 | A5・232ページ |
定価 | 本体2,000円+税 |
在庫 | 在庫あり |
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目次
[論文]
文明との邂逅と平埔族の漢化 (山路勝彦)
ヤミ族の社会生活についての予備的調査と今後の課題 ( 野林厚志)
シラヤ語人称代名詞
──李壬癸教授著『高雄縣における原住民の言語』刊行に寄せて (土田 滋)
[資料]
随観抄記(伊能嘉矩著) (江田明彦編)
クヴァラン族、トルビアワン族の伝承 (清水 純)
[追悼文]
王?興教授と台湾原住民研究 (笠原政治)
王さんの想いで ( 土田 滋)
王さんとの出会いと別れ (末成道男)
王さんの思い出 (森口恒一)
王先生の思い出 ( 清水 純)
姫野翠さんのこと (小西正捷)
姫野さんの馬鹿力 (土田 滋)
姫野翠さんの思い出 (末成道男)
いつも台湾原住民がらみだった姫野翠教授とのお付き合い (笠原政治)
内容説明
かつて「高砂族」と呼ばれた台湾先住諸族の研究誌。漢化と近代化の波に呑まれ、消失・変容しつつある多様なその文化を、人類学の立場から考究、紹介。論文・資料・調査報告・エッセイなどを含む関連情報の拠点。
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創刊にあたって
日本順益台湾原住民研究会代表
末成道男
本誌は、本会の会員が台湾原住民について収集した資料や論考を発表する場としてもうけたものである。
本会は、順益台湾原住民博物館の研究助成を得て、日本の台湾原住民に関する文化人類学的研究の総括と一層の発展をはかるため、これまで台湾原住民に関する民族学・言語学の分野で第一線で活躍中の研究者に加え、これから専門家になろうとしている若手研究者で組織し、1994年3月から4年間、毎年数回の全体会議と作業部会を開き、研究者同士の相互理解と交流を深め、また、戦前戦中の研究者のお話をうかがうなど研究活動を行ってきた。
台湾では、五十年の日本統治の終結から、さらに五十年を経過した今日、その直接の体験をもつ人々が少なくなり、一次的な記憶を確かめる機会がますます減ってきた。それと共に、多くの二次的な未刊行資料も、散逸し忘れ去られている。さらに、われわれの世代が調査に従事してきたこの四半世紀は、経済を中心とする社会の激変の時代であり、かろうじて存続していた伝統的民俗の多くが再編過程の中にあって、消失または変質しようとしている。このような状況の中にあって、原住民の文化はいかに変容し、現代社会に接合してゆくのであろうか。もとより伝統文化といっても、太古以来そのまま続いているというよりは、歴史時代に形成され変遷を経てきたものである。しかし、それは現代起こっているような、動きの早い創られている民俗に比べ、一定の整合性と持続性をもち長い間人々の考えや行動の基準となっていた。こうした意味での固有の伝統文化を、過去の資料と現存の人々からの聞き取りによって復元し、その実態を模索する時間は余り残されていない。われわれの力は限られているが、文献の収集・分析とフィールドワークを有機的に組み合わせて地道な記録を残すという作業を通じて、原住民研究の展開に一石を投ずることになれば幸いである。
同じく本会の刊行物である「台湾原住民研究資料叢書」は、単行本としてまとまった内容と量の論文や資料を収録するのに対し、本誌は、調査報告、書評、通信、エッセイなどを載せ、学術的な進展だけでなく、本会と一般読者、会員相互の交流にも役立つことを期待している。したがって、一冊にまとめる前の段階の調査資料や文献案内のようなものも含むが、論文は一定の水準を維持するため部外者のレフェリー制度も導入したい。
このような学術的な企画にたいし、「社会で得たものは、社会に還元する」という理念のもとに無条件の資金援助を与えられた、順益台湾原住民博物館の林清富理事長に感謝の意を表するものである。
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執筆者紹介
江田明彦(えだ あきひこ) 湘南工科大学
笠原政治(かさはら まさはる) 横浜国立大学教授
小西正捷(こにし まさとし) 立教大学文学部教授
土田 滋(つちだ しげる) 順益台湾原住民博物館館長
森口恒一(もりぐち つねかず) 静岡大学人文学部教授
野林厚志(のばやし あつし) 東京大学大学院理学系研究科博士課程
清水 純(しみず じゅん) 日本大学経済学部教授
末成道男(すえなり みちお) 東京大学東洋文化研究所教授
山路勝彦(やまじ かつひこ) 関西学院大学社会学部教授