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上海

都市生活の現代史

上海

中国の最先端を疾走し、世界の注目を集め続ける都市。多くの写真・図版を添え、生活者の視点から読み直す社会史入門。

著者 岩間 一弘 編著
金野 純 編著
朱 珉[王民] 編著
高綱 博文 編著
ジャンル 歴史・考古
シリーズ 風響社あじあブックス
出版年月日 2012/04/18
ISBN 9784894896536
判型・ページ数 A5・352ページ
定価 本体1,800円+税
在庫 在庫僅少
 

目次

目次

上海を学ぶ人のために

Ⅰ 上海モダンと民衆生活―1912~37年
 概論 中国・上海にとって近代とはどのような時代か
 1 企業家たちの上海……9 上海のなかの日本人
Ⅱ 戦時・戦後の都市生活―1937~49年
 概論 日中戦争は上海に何をもたらしたのか
 1 上海を統治した日本の傀儡政権……7 戦後上海の日本人
Ⅲ 中国革命の夢と現実─1949~66年
 概論 社会主義は都市社会をどう変えたのか
 1 「解放」,反革命鎮圧運動,「三反」「五反」運動……9 中国の社会主義建設と日本人
Ⅳ 文化大革命の混乱─1966〜78年
 概論 文化大革命とは何だったのか
 1 文化大革命の開始と紅衛兵運動……8 文化大革命と日本
Ⅴ 「改革」と「開放」の胎動―1978~92年
 概論 文化大革命とは何だったのか
 1 路地裏住民の日常生活……7 「改革」「開放」のなかの上海と日本
Ⅵ 高度成長期の都市生活―1992~2010年
 概論 中国・上海は今どのように変わりつつあるのか
 1 株式投資ブームの始まり……13 上海と日本―活発化するビジネスと「反日」「嫌中」のリスク
Ⅶ ライフヒストリーからみる上海と日本
 1 学生交流から中国ビジネスへ……2 親子二代でみつめる日本

付録
 読書案内─上海社会を知るために
 主要参考文献
 図表出所一覧
 索引
 後記

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内容説明

 

今や在留邦人が5万を超える上海。中国の最先端を疾走し、世界の注目を集め続ける都市の来歴を、生活者の視点から読み直す社会史入門。多くの写真・図版を添え、多様な切り口で示す百年のエピソードから浮かび上がる、アジアン・メトロポリスの素顔。

 

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上海を学ぶ人のために

 

 

上海史へのいざない

中国は,「平均」が意味のない国である。面積が広く,人口が多く,歴史が長く,格差が大きく,しかも裏事情が多い。例えば,中国の貧富の格差を表すデータとして,現在では1%の家庭が全国の富の4割以上を掌握しているという推計(北京大学・夏業良教授)もある。それゆえ中国社会においては平均値を見つけるよりも,個別の事情に深くわけいって見ていくほうが真相にせまれることが多い。

中国において,農業・農村・農民の「三農」問題がきわめて重要なことは今も変わりない。しかし,現在そして未来の中国が「農業国」であるとはいいきれない。中国国家統計局が2010年秋に実施した第6回全国人口調査によると,中国の都市人口は約6.7億人(総人口は約13.4億人),都市化率は49.7%にまで達した。すでに都市人口と農村人口は拮抗しており,近いうちに逆転すると予想される。ちなみに,上海市の常住人口は2010年末時点で2220万人を超えており,今後もさらに増加すると予想される(なお東京都の人口は現在約1320万人で,今後も横ばいと見込まれている)。これらの統計には,行政上都市に区分された地域の農業人口や,農村からの出稼ぎ労働者も都市人口に含まれているため,実際より数値が高く見積もられすぎている。とはいえ,そこから受ける印象は,私たちが想像するかつての中国とはかなりちがったものになる。都市化と同時に,人々の所得向上と中流階層化も進む。中国社会科学院が2011年8月に公表した『中国都市発展報告』によると,中国都市部の中間所得層(世帯のエンゲル係数が0.3~0.373)は,2009年までに約2億3000万人に達しているという。さらに,イギリスの市場調査会社ユーロモニターによれば,2020年の中国の中流階層(年収1万1800~1万7700ドル程度)は約7億人に達すると予想される。中国でも,都市民と中産階層が主流の時代がまもなく到来しそうだ。

本書は,上海という都市の100年間の歴史を,できるだけ人々の生活体験によりそいながら概説するものである。上海はこの100年間,一時期をのぞいてつねに中国社会・文化の劇的な変化をリードしてきた。現在の上海では,海外に目を向け国際的に活躍する人材が目にみえて増加している。上海は,世界から様々なヒト・モノ・カネ・情報をひきよせる吸引力をもって,真の意味での「国際都市」「世界都市」に近づきつつある。そこは,私たち日本人を含めた外国人にとって中国・中華世界への入口であると同時に,多くの大陸中国人にとって世界への窓口である。このような都市を,本書は生活者の観点にたちながら100年という長いスパンで定点観測し,上海生活の変化のダイナミズムを文章と図版でわかりやすく解説していく。

さらに本書は,多重視点で上海100年の歩みを見る「3D社会史」をめざす。都市というのは多様なものであり,多様性・多面性こそが都市の最大の魅力といえる。とりわけ日常的な生活に着眼すれば,それは断片化されており,その断片をつむぎ合わせるしか都市の変化全体を見わたす方法はない。とはいえ,多くの情報・文化が密集する都市空間のなかで,個人が鋭敏な感性を発揮できるのはどうしてもある一面の変化に限られる。本書もその限界をまぬがれないが,できるだけ異なる関心をもつ人々に接して,その多様な視点にふれられるように心がける。

 

本書の構成

本書は,日本の学生・ビジネスマン・市民などを対象に,上海の100年間の歩みをわかりやすく解説しようとする。日本の上海史に関する本は,現在にいたる長い期間を論じた通史がなく,また上海の現状を紹介する本は,歴史の流れを十分に説明しないことが多かった。本書は,歴史学・社会学・ジャーナリズムなどの上海に対する見方を総合・整理して一般読者に提供したい。

本書の刊行される2012年は,中国が王朝・皇帝の支配から脱却し,アジア初の共和制国家である中華民国が樹立されてからちょうど100周年にあたる。この100年間,上海の人々は多くの革命・戦争・事件を体験し,30年以上連続して政治・社会が安定し経済・文化が発展した時期がなかった。上海の人々にとって,経済成長と生活向上を体験した時代は最初と最後の50年間あまりに限られ,そのあいだの半世紀は政治に翻弄される時代であった。本書では現在までの上海の100年間を,①辛亥革命=中華民国成立,②日中全面戦争勃発,③中国革命=中華人民共和国成立,④文化大革命,⑤「改革」「開放」路線決定,⑥鄧小平「南巡講話」を便宜的な画期として,6つの時期に区分して論じる。

第Ⅰ~Ⅵ章は,(1)上海を中心にみた中国史の概説,(2)さまざまな視点からみる上海の都市生活,(3)上海と日本・日本人の関わりを解説する項目で構成されている。各時代の上海生活を具体的にイメージしやすいように,できるだけ多くの図版を用いるようにした。各章の概要は次の通りである。

 

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編著者紹介

岩間一弘(いわま かずひろ)

1972年生,千葉商科大学教授,おもな著書に『上海近代のホワイトカラー―揺れる新中間層の形成』(研文出版,2011年)

 

金野 純(こんの じゅん)

1975年生,学習院女子大学准教授,おもな著書に『中国社会と大衆動員―毛沢東時代の政治権力と民衆』(御茶の水書房,2008年)

 

朱  珉(しゅ みん)

1976年生,千葉商科大学専任講師,おもな著書に『現代中国の格差問題』(共著,同友館,2009年)

 

髙綱博文(たかつな ひろふみ)

1951年生,日本大学教授,おもな著書に『「国際都市」上海のなかの日本人』(研文出版,2009年)

 

執筆協力者

石川照子(いしかわ てるこ) 1957年生,大妻女子大学教授

伊藤俊彦(いとう としひこ) 1946年生,日本技術株式会社上海弁事処処長

王  蕾(おう らい) 1976年生,東華大学専任講師

菊池敏夫(きくち としお) 1947年生,元神奈川大学附属高校教諭

関 智英(せき ともひで) 1977年生,千葉商科大学非常勤講師

福士由起(ふくし ゆき) 1973年生,総合地球環境学研究所研究員

 

 

執筆分担一覧

上海を学ぶ人のために:岩間・金野

Ⅰ章:年表・概論:岩間,1~3:岩間,4:福士,5:菊池・岩間,6~7:岩間,8~9:髙綱

Ⅱ章:年表:岩間,概論:髙綱,1:関,2~6:岩間,7:髙綱

Ⅲ章:年表・概論:金野,1~2:金野,3:岩間・金野,4~7:金野,8:岩間,9:金野

Ⅳ章:年表・概論:金野,1~6:金野,7:岩間,8:金野

Ⅴ章:年表・概論:岩間,1~2:岩間,3:王・岩間,4~6:岩間,7:岩間・王

Ⅵ章:年表・概論:岩間,1~4:岩間,5:朱・岩間,6:朱,7:岩間,8:朱,9~10:岩間,

11:石川・岩間,12~13:岩間

Ⅶ章:1:伊藤俊彦著・岩間編,2:朱

付録:読書案内,1:髙綱,2:金野,3:岩間,上海地図:岩間・金野

 

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