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日モ関係の歴史、現状と展望

21世紀東アジア新秩序の構築にむけて

日モ関係の歴史、現状と展望

戦後の日モ交流をふりかえり、両国の関係を基軸に、東アジアの国際関係の歴史と現状、およびその課題を再検討。シンポジウムの成果。

著者 ボルジギン フスレ
ジャンル 歴史・考古
報告書・報告論集
シリーズ アジア研究報告シリーズ
出版年月日 2016/03/28
ISBN 9784894898073
判型・ページ数 A5・220ページ
定価 本体3,500円+税
在庫 在庫あり
 

目次

まえがき ボルジギン・フスレ(Husel Borjigin)

日モ関係の歴史,21世紀東アジア新秩序の構築に向けて 昭和女子大学理事長・学長 坂東眞理子(Mariko Bando)

挨拶 モンゴル国会議員 サンジャースレンギーン・オヨーン(Sanjaasuren Oyun)

挨拶 モンゴル国駐箚特命全権大使 清水武則(Takenori Shimizu)

論考:

日本人モンゴル抑留問題の再検討:基本的文書史料の紹介 二木博史(Hiroshi Futaki)

満洲国人のソ連抑留と中国への移送についての考察:溥儀を中心に ボルジギン・フスレ(Husel Borjigin)

 はじめに
 1 溥儀などのソ連軍による逮捕についての再検討
 2 溥儀などのシベリア抑留
 3 溥儀など満洲国官吏の中国への移送
 おわりに

日本・モンゴル関係における捕虜問題 B. エルデネビレグ(B. Erdenebileg)

モンゴル・日本関係の発展にアカデミー会員Ts. ダムディンスレンが果たした役割 G. ミャグマルサムボー(G. Myagmarsambuu)

強兵なき富強? 近現代東アジアにおける四つの「戦後」 村田雄二郎(Yujiro Murata)

 はじめに
 1 日清戦争:民主化と軍事化
 2 日露戦争:立憲主義と帝国主義
 3 第一次世界大戦:軍拡なき民主化
 おわりに

ソ連,英国,米国首脳による1945年のヤルタ会談とモンゴルのstatus quo(現状) O. バトサイハン(O.Batsaikhan)

 はじめに
 1 スターリンと宋子文の交渉
 2 モンゴルのstatus quo
 結論

モンゴル開拓の歴史とモンゴル人のアイデンティティ 窪田 新一(Shinichi Kubota)

 1 「草原開拓」に対して
 2 草原開拓への評価
 3 開発の方向

構造転換の世界経済と新興経済,そして周辺経済 平川 均(Hitoshi Hirakawa)

 はじめに
 1 世界とアジアの構造転換
 2 変わる発展メカニズム
 3 構造転換と中国
 4 構造転換で変わる貿易構造と中国及び周辺国
 結びに代えて:構造転換の現局面

新たな段階に入ったモンゴル・日本の経済協力 L. ダシプレブ(Dashpurev Luvsandoo)

ポスト社会主義モンゴル国牧畜部門における開発プロジェクトと土地改革 上村 明(Akira Kamimura)

 はじめに
 1 モンゴル国の牧畜における牧地私有化の圧力
 2 「コミュニティ」を基盤とした自然資源管理(CBNRM)プロジェクトと牧地法案
 3 CBNRM プロジェクト・牧畜民グループの事例調査
 4 牧地法案のその後:土地法改正案と牧地保有の問題点
 おわりに

次代のリーダーはどの国か? モンゴルからみたアジアの将来予測 湊 邦生(Kunio Minato)

 はじめに
 1 方法
 2 結果
 おわりに

モンゴル・日本における民間交流についての一考察 シャライド・ツェデンバルジリーン・トゥメン(Sharaid Tsedenbaljir Tumen)

 はじめに
 1 「シャーリーボー=吉田・ソヨルエルデネ」基金について
 2 モンゴル・日本における民間学術交流
 おわりに

B. ヤボーホランによる俳句について R. ビゲルマー(R.Bigermaa)

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内容説明

2015年8月にウランバートルで開催された、第8回日モ国際シンポジウム「日モ関係の歴史、現状と展望:21世紀東アジア新秩序の構築にむけて」の成果論集。終戦後の日モ交流をふりかえり、両国の関係を基軸に、東アジア各国の国際関係の歴史と現状、およびその課題を再検討。

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まえがき

ボルジギン・フスレ
(Husel Borjigin)

 

 第2次世界大戦終結70周年に際し,世界各国でさまざまな記念行事やシンポジウムがおこなわれた。その内,2015年8月29,30日に第8回日モ国際シンポジウム「日モ関係の歴史,現状と展望:21世紀東アジア新秩序の構築にむけて」がウランバートルで開催された。わたくしどもが企画し,日本とモンゴルの関係団体主催のウランバートル国際シンポジウムは,これまですでに7回実施したが,終戦後の日モ交流の成果をふりかえり,両国の関係を基軸に据えて,東アジア各国の国際関係の歴史と現状,およびその課題をかんがえなおすため,本テーマに至った。

 かつての日本にとって「満蒙」は「生命線」と言われ,「存亡に関わる」問題と認識され最も重要な地域として位置付けられていた。しかし,戦後,日本と東アジア諸国との関係史の研究は東アジア関係を,日中,日韓,ないし日台関係の枠組みでのみ捉えられてきた。日中韓台の間の歴史認識や領土問題はいずれも19世紀末から20世紀半ばまでの歴史のなかの「出来事」に限定されたのである。しかし,実際,日本とモンゴルの間には,かつて2度も戦争があった(1939年のハルハ河・ノモンハン戦争,1945年8月のソ連・モンゴル連合軍の対日戦)。そのため中韓台の場合と異なって,日本とモンゴルはどのように歴史的対立を乗り越えて,友好関係を築くことができたのか,が欠落したままで今日に至っている。国際関係の歴史的連続性から多角的に日モ関係を把握することは,まさに注目すべき課題として残されているのである。

 第8回ウランバートル国際シンポジウムは,この課題に応えるものとして開催したのである。今回のシンポジウムは,第2次世界大戦終結後の日モ関係を中心に,東アジア地域をめぐる地政学的特質などに焦点をあて,新たに発見された歴史記録や学界の最新の研究成果を踏まえて,歴史の恩怨を乗り越えた日本とモンゴルの友好関係の経験から得られる知見の発見とその検討を目的とした。
モンゴル地域は20世紀前半,さまざまな勢力による緊張をはらんだ場所であり,冷戦時代も,ソ連(ロシア),中国,日本,アメリカが強い関心を持っていた。日本とモンゴルが敵対国から友好国へ転換した背景の1つは,抑留者の帰還を含む,2度の戦争をめぐる歴史認識や賠償問題を曲折しながらも解決できたからである。「シベリア抑留」とよばれるように,第2次世界大戦後の日本人の海外抑留について,人びとの視線は主に,旧ソ連に抑留された日本人に限定されてきた。今回のシンポジウムの議題の1つは,「第2次世界大戦の終結と日本人のモンゴル抑留」である。モンゴル抑留日本人を中心に研究することは,モンゴルと日本,ソ連,中国の諸関係を分析する作業としても重要であり,また,第2次世界大戦後の日モ関係史を研究する上での出発点としても重要性を有している。

 終戦後の日モ関係について,従来の研究では,日本・台湾,日本・アメリカ,台湾・アメリカ関係史,あるいは中ソ関係史のなかで,モンゴルの国連加盟と日モ国交締結が位置付けられてきた。しかし,モンゴルの国連加盟は中国に先立ち,日モ国交締結も日中国交正常化より先であった。当時のソ連,アメリカの対外戦略のなかで,モンゴルはどのように位置付けられていたのか,対モンゴル交渉において日本はどのようなイニシアチブを発揮したのか,日モ国交締結が日中国交にどのような影響をあたえたか,本シンポジウムはこれらの課題を念頭に,モンゴル地域をめぐる国際関係,東アジア社会の力関係の原点を再検討した。

 さらに,今回のシンポジウムは,これまでのアプローチでは排除されがちな「日本・モンゴルの視点」から,東アジアの平和と繁栄,そして新しい秩序,とりわけ歴史・領土問題や資源開発に伴う経済的相互依存が織り成す複雑な東アジア地域のあるべき協力の姿について考察し,未来志向の視座を求めるこころみをおこなった。

 2日間のシンポジウムでは計20本の論文が発表され,本論文集はそのうちの13本を収録している。

 本シンポジウムは昭和女子大学とモンゴル国立大学モンゴル研究所のご協力,在モンゴル日本大使館,モンゴル人文大学,モンゴルの歴史と文化研究会,モンゴル・日本人材開発センターの後援,独立行政法人日本学術振興会(平成27年度2国間交流事業オープンパートナーシップ共同セミナー),公益財団法人渥美国際交流財団,守屋留学生交流協会の助成をえた。また,シンポジウム開会式では,昭和女子大学理事長・学長坂東眞理子先生,モンゴル国会議員サンジャースレンギーン・オヨーン(Sanjaasuren Oyun)氏,在モンゴル日本大使清水武則氏が挨拶と祝辞を述べた。モンゴル国立大学モンゴル研究所J. バトイレードゥイ(J. Bat-Ireedui)氏,および昭和女子大学研究支援担当の吉田奈央子氏,倉元美香氏,山田絢子氏には事務を手際よくとりまとめていただいた。三矢緑氏がモンゴル語の論文の翻訳を担当した。本書の刊行するにあたり,上記の財団およびおおくの関係者からの多大なる協助をいただいたことにかさねて厚く御礼申しあげたい。さらに,風響社社長石井雅氏の熱意により本書が出版されたことに,記して感謝の意をあらわしたい。

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編者紹介
ボルジギン・フスレ(Husel Borjigin)

昭和女子大学人間文化学部准教授
北京大学哲学部卒。東京外国語大学大学院地域文化研究科博士後期課程修了,博士(学術)。内モンゴル大学芸術学院助手,講師をへて,1998年来日。東京大学大学院総合文化研究科・日本学術振興会外国人特別研究員をへて,現職。
主な著書に『中国共産党・国民党の対内モンゴル政策(1945〜49年):民族主義運動と国家建設との相克』(風響社,2011年),共著『20世紀におけるモンゴル諸族の歴史と文化:2011年ウランバートル国際シンポジウム報告論文集』(風響社,2012年),『ハルハ河・ノモンハン戦争と国際関係』(三元社,2013年)他。

 

執筆者紹介(掲載順)

坂東 眞理子(ばんどう まりこ/Mariko Bando)
東京大学卒業,モンゴル人文大学名誉博士。
昭和女子大学理事長・学長。
内閣総理大臣官房参事官,統計局消費統計課長,男女共同参画室長,埼玉県副知事,内閣府男女共同参画局長などをへて,現職。
『女性の品格』(PHP研究所[PHP新書],2006年),『日本の女性政策』(ミネルヴァ書房,2009年),『男女共同参画社会へ』(勁草書房、2004年),『女性の知性の磨き方』(ベストセラーズ,2015年)など著書多数。

サンジャースレンギーン・オヨーン(Sanjaasuren Oyun)
プラハ・カレル大学卒業,ケンブリッジ大学博士(地理学)。
モンゴル国会副議長,外務大臣,環境・緑化大臣などを歴任。
現在,モンゴル国民勇気・緑の党々首,国会議員。

清水 武則(しみず たけのり/Takenori Shimizu)
中央大学法学部卒業。
現在,モンゴル駐箚日本国特命全権大使。
主な論文に,「モンゴルにおける日本のプレゼンス低下と中国の台頭」(『日本とモンゴル』第43巻2号,2009年),「モンゴルをめぐる資源外交:タバントルゴイ炭田を中心に」(『日本とモンゴル』第45巻第2号,2011年)など。
モンゴル国労働功績紅旗勲章受賞(2015年)。

二木 博史(ふたき ひろし/Hiroshi Futaki)
一橋大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。
現在,東京外国語大学大学院教授。
主な著書に,Mongolchuudyn tüükh soyolyn öviig möshgökhüi(Ulaanbaabar, 2002),『蒙古的历史与文化』(呼和浩特, 2003年),Landscapes Reflected in Old Mongolian Maps(Tokyo, 2005[共著])など。

ボルジギン・フスレ (呼斯勒/Husel Borjigin)
編著者紹介参照

B. エルデネビレグ(B.Erdenebileg)
モンゴル国立大学大学院歴史研究室博士課程。

ガリンデヴィーン・ミャグマルサムボー(Galindeviin Myagmarsambuu)
モンゴル国防大学卒業,同大学博士(歴史学)。
現在,モンゴル科学アカデミー歴史・考古学研究所首席研究員,教授。
主な著書に,『モンゴルの独立とハタンバートル・マグサルジャブ』(モンゴル語,ウランバートル,2000年),『バルガ人の自由のための戦い』(モンゴル語,ウランバートル,2007年),『モンゴルの将軍(4):常勝将軍ダムディンスレン』(モンゴル語,ウランバートル,2012年)など。

村田 雄二郎(むらた ゆうじろう/Yujiro Murata)
東京大学大学院人文科学系研究科博士課程中退(文学修士)。
現在,東京大学大学院総合文化研究科教授。
編著書に,『清末中国と日本:宮廷・変法・革命』(研文出版,2011年[共著]),『新編 原典中国近代思想史』7巻(岩波書店,2010-11年[共編]),『シリーズ20世紀中国史』4巻(東京大学出版会,2009年[共編])など。

O. バトサイハン(O. Batsaikhan)
イルクーツク大学卒,モンゴル科学アカデミー博士(Sc.D)。
現在モンゴル科学アカデミー国際研究所教授。
主な著書に,『モンゴル独立と中国・ロシア・モンゴル3国のキャフタ協定』(モンゴル語,ウランバートル,2002年),Mongolia: Becoming a Nation-State (1911-1952), Ulaanbaatar, 2014. The Bogdo Jebtsundamba Khutuktu, The last emperor of Mongolia: the life and legends, Research work,, Ulaanbaatar, 2016など。

窪田 新一(くぼた しんいち/Shinichi Kubota)
大正大学大学院文学研究科史学専攻博士課程単位取得退学(文学修士)。
現在,大正大学文学部歴史学科准教授,公益社団法人日本モンゴル協会理事長。
編著書に,『モンゴル佛教史研究1〜4』(ノンブル社,2015年),『世界地理講座2:東北アジア』(朝倉書店,2009年[共著])など。

平川 均(ひらかわ ひとし/Hitoshi Hirakawa)
明治大学大学院経営学研究科博士課程単位取得退学。1994年京都大学博士(経済学)。
茨城大学,東京経済大学,名古屋大学などを経て,現在,国士舘大学21世紀アジア学部教授,名古屋大学名誉教授。
主要著書に『NIES:世界システムと開発』同文館,1992年。共編著に Servitization, IT-ization, and Innovation Models: Two-stage Industrial Cluster Theory(London and New York: Routledge, 2013)など。

L. ダシプレブ(L. Dashpurev)
博士(国際学)。
モンゴル人文大学准教授。
駐日モンゴル国大使館領事,駐タイ王国大使などをへて,現職。
上村 明(かみむら あきら/Akira Kamimura)
東京外国語大学大学院博士後期課程単位取得退学。
現在,同大学外国語学部非常勤講師・研究員。
共編著書に,Landscapes reflected in old Mongolian maps(「史資料ハブ地域文化研究拠点」研究叢書,東京外国語大学)。論文に,“Pastoral mobility and pastureland possession in Mongolia” (N. Yamamura, N. Fujita, and A. Maekawa [eds.] Environmental Issues in Mongolian Ecosystem Network under Climate and Social Changes, 2012, Springer)など。

湊 邦生(みなと くにお/Kunio Minato)
神戸大学大学院国際協力研究科博士後期課程修了,博士(学術)。
現在,高知大学教育研究部総合科学系地域協働教育学部門准教授。
主な論文に「モンゴル 圧倒的な“南の隣人”への反感と現実認識」(『国際問題』第643号,2015年),“Mongolian Tolerance and Intolerance Toward Different Cultures: An Exploration Based on Analyses of Cross-National Survey Data”(Acta Mongolica, 2014年)など。

シャライド・ツェデンバルジリーン・トゥメン(Sharaid Tsedenbaljir Tumen)
モンゴル人民革命党大学卒業。
モンゴル国ドルノド県フルンボイル郡長,同県庁書記などを歴任。
現在,モンゴル国「バルガの遺産」協会長。
主な著書に『バルガ・ガンダンサムダンリン寺』(モンゴル語,ウランバートル,2015年)など。

R. ビゲルマー(R.Bigermaa)
モンゴル国立教育大学大学院修士課程修了(文学修士)。
現在,モンゴル国立大学大学院文学芸術研究科博士後期課程在籍,モンゴル国立教育大学非常勤講師。
主な著書に『B. ハグワスレンの詩についての研究』(モンゴル語,ウランバートル,1998年),『新しい時代における詩の刷新』(モンゴル語,ウランバートル,2003年)など。「モンゴル大統領認定優秀教科書賞」受賞。

三矢 緑(みつや みどり/Midori Mitsuya)
東京外国語大学大学院地域文化研究科博士後期課程単位取得退学。
現在,翻訳などに従事。
翻訳書に,ボルジギン・フスレ(呼斯勒),今西淳子編著『20世紀におけるモンゴル諸族の歴史と文化: 2011年ウランバートル国際シンポジウム(報告論文集)』(共訳,風響社, 2012年3月), 田中克彦,ボルジギン・フスレ編著『ハルハ河・ノモンハン戦争と国際関係』(共訳,三元社,2013年)など。

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