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フィールドワーク

中国という現場、人類学という実践

フィールドワーク

変貌し続ける中国と向き合い、新たな方法と主題を模索。老壮青それぞれの立場で描く実践の記録、新たな人類学への挑戦。

著者 西澤 治彦
河合 洋尚
ジャンル 人類学
シリーズ 人類学集刊
出版年月日 2017/06/10
ISBN 9784894892422
判型・ページ数 A5・552ページ
定価 本体3,600円+税
在庫 在庫あり
 

目次

はじめに  西澤治彦・河合洋尚

問題提起 中国人類学のフィールドワークを巡る諸問題  西澤治彦

●第一部 フィールドの現場から

☆巻頭エッセー 私のフィールドワークを振り返って  末成道男
☆インタビュー 末成先生を囲んで  末成道男/瀬川昌久・桐本東太・西澤治彦

「反復型」調査の有効性
     ――広東省珠江デルタでのフィールドワークから  長沼さやか
ハニ族の村で暮らす
     ――現地適応型フィールドワークの技法  阿部朋恒
「宗教」をはみ出す
     ――雲南におけるムスリムのフィールドワーク  奈良雅史
チベット族とボン教のフィールドワーク
     ――縁をたぐり寄せ、できることをすること  小西賢吾
同僚として、調査者として  155
     ――広州の会社でフィールドワークした「私の経験」  田中孝枝
フィールドワークにおける協働関係
     ――陝北農村に「日本の女」として暮らす  丹羽朋子
貴州省で山歌と出会う
     ――出来事指向のフィールドワーク  梶丸 岳
座談会 現代中国におけるフィールドワークの実践
       稲澤努、藤野陽平、横田浩一、小林宏至、兼城糸絵、川瀬由高、河合洋尚

●第二部 フィールドワークと民族誌

☆巻頭エッセー 現地調査で学んだこと──エスニック・グループという視点  田仲一成
☆インタビュー 田仲先生を囲んで  田仲一成/瀬川昌久・西澤治彦

中国社会のフィールドワークの可能性
     ――華北地域における共同調査の経験から  佐々木 衞
「調査」と「フィールドワーク」を巡る考察
     ――陝西の農村および都市での経験から  田村和彦
住み込みと継続的なフィールドワーク
     ――広東省珠江デルタにおける経験から  川口幸大
都市調査とマルチサイト民族誌
     ――広東省を中心として  河合洋尚
自社会人類学のフィールドワーク論
     ──中国の経験から  劉 正愛
歴史学者の行うフィールドワーク
     ――江南地域社会史調査の場合  佐藤仁史
フィールドと文献研究の狭間で
     ――江蘇省における調査経験から  西澤治彦

●総合討論会 中国におけるフィールドワークと人類学の可能性
          瀬川昌久・聶莉莉・菊池秀明・河合洋尚・西澤治彦

あとがき  西澤治彦・河合洋尚
索引

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内容説明

調査が可能となって30年。変貌し続ける中国と向き合い、様々な主題を掲げ、新たな方法を模索し続けたフィールドワーカー達。本書は、老壮青それぞれの立場で描く実践の記録であり、新たな人類学への大いなる挑戦である。

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はじめにより
 

西澤治彦・河合洋尚

 

 

 人類学が中国を研究対象とするようになってはや一〇〇年、中国本土が外国人研究者の調査に再び門戸を開いてからはや三〇年が経とうとしている。この三〇年は、中国人類学を中心とする東アジアの学際的な研究会である「仙人の会」の活動の三〇年とも重なり、これまでに中国各地でフィールドワークが行われ、多くの論文や民族誌が書かれてきた。

 この間、中国社会も経済的な発展を遂げ、中国人研究者も活躍するなど、中国人類学をとりまく情況も大きく変化してきた。また、民族誌のありようや、歴史学との関係をはじめ、人類学の進むべき道も模索されているのが現状である。
こうした中で、中国におけるフィールドワークについて、率直に語り合い、議論を交わすことは必要なことでもある。言うまでもなく、人類学にとって、フィールドワークは、学問としての人類学の基礎をなすものである。フリードマンの発した「我々はフィールドワーカーでなかったら、一体、何者になれるのか?」という自問の言葉は、中国社会の研究を歴史的に拡大していくと、限りなく歴史学に接近していくというジレンマの中で、人類学としてのアイデンティティを模索した言葉でもあった。

 中国における人類学的なフィールドワークの問題を考える上では、第一に、こうした根源的な問いかけがある。人類学は中国というフィールドで、歴史学に吸収されていくだけなのか、それとも我々の葛藤は、新たな人類学を生む出すための過程なのか。

 第二の問題は、より具体的、実践的なものだ。文化人類学では、一般論としてのフィールドワーク論が溢れているものの、各国の情勢にあわせたフィールドワークの実践論は少なく、特に中国の社会政治状況を考慮したフィールドワーク論は、日本では一冊も出版されていない。少ない情報のなか、悪戦苦闘してフィールドワークを行っている人類学者が大半を占めているのが実情である。

 社会主義中国でのフィールドワークは、一定の制限があるため、従来のような長期間の住み込み調査というフィールドワークは容易ではなく、訪問調査を何度も繰り返すという方法をとらざるを得ないことが多い。ところが、変化の激しい中国にあって、こうした定点観察を長期間にわたって行うという手法は、必ずしも弱点とは言えなくなってきている。くしくも、近年、マリノフスキー・モデルのフィールドワークの普遍性に疑問が呈されるようになり、各地域の事情にあわせたフィールドワークのあり方が問われるようになっている。中国は、こうした「現地適応型フィールドワーク」を問い直す格好の舞台であり、この議論は、中国のみならず人類学全体のフィールドワーク論を考え直す契機ともなり得よう。

 以上の情況を鑑み、本書では、「中国でフィールドワークすること」について、二つの視点からの検討を目論んでいる。

 第一部では、「中国でどのようにフィールドを展開するか」という技術的・実践的な側面を、各執筆者のフィールド体験から論じてもらう。具体的には、どのようにフィールドを選定し、調査地に入ったか、フィールドでの困難や、それにどのように対処したか、フィールドワークで注意すべき点や、調査研究を順調に進めるためのアドバイスなどを披露してもらう。

 第二部では、「フィールドワークを通してどのように中国社会を解読するか」という理論的な側面を、これも各自のフィールド体験を交えながら議論してもらう。言うまでもなく、フィールドワークはそれ自体が目的ではなく、論文なり、民族誌を執筆することが最終目的である。従って、フィールドワーク論は、民族誌の執筆を抜きにして語ることはできない。調査の制約は、結果としての「民族誌」にも一定の影響を与えている。その一つが、多くの民族誌が「民族誌的現在」を乗り越え、歴史的な記述になっていること、さらに言えば「中国革命史」としての一面も備えたものになっている。また、近年の中国人研究者の活躍は、「ネイティブ人類学者」の問題とも関連してくるし、少数民族地域での調査や都市農村関係、移民を輩出している地域では華僑・華人との関係も視野に入れる必要がある。

 巨大な複合社会としての中国を読み解くためには、他地域とは異なる、フィールドワークのあり方があってしかるべきである。各執筆者には、中国の民族誌はどうあるべきか、中国人類学は何をめざすべきか、ということを念頭におきつつ、中国におけるフィールドワークのあり方について考察、および提言をして頂くようにお願いしている。

 なお、第一部の巻頭には、末成道男先生に、第二部の巻頭には田仲一成先生に、これまでのフィールドワークを振り返っていただくエッセーをお願いした。またこれをもとに、両先生を囲んでのインタビューもさせて頂いた。末成先生には、長年に渡って「仙人の会」を陰で支えて頂いたほか、シンポジウムの開催や論文集の刊行などを通じて、まだ大学院生であった我々を世に送り出して頂くなど、大変お世話になった。現在でも現役のフィールドワーカーでおられる末成先生の長年の調査のご経験は、後に続く世代としても「共有」すべきものであろう。また、田仲一成先生は、中国文学がご専門であり、文化人類学という訳ではないが、豊富な中国学の学識に加え、香港や東南アジア、そして中国本土にて精力的にフィールドワークをされてきている。人類学にも造詣が深く、先生のこれまでの調査経験は、「中国研究」としての中国人類学のありようを考える上で、示唆に富むものである。ともに貴重なインタビューであるので、フルバージョンで掲載させて頂いた。

 この二つのインタビューのほか、本書では二つの座談会も行っている。第一部の最後では、第一部の内容を踏まえた上で、最新の情報を補足してもらうべく、長期のフィールドから帰ったばかり、あるいはフールドワーク中の若手研究者らに集まってもらい、座談会を行った。また、第二部の最後でも総合討論を行った。ここでは、第二部だけでなく本書全体を踏まえた上で、中国人類学とフィールドワークに関する諸問題が忌憚なく議論されている。こちらは十分な時間をかけたため、長文のものになってしまったが、インタビュー同様、敢えてフルバージョンのまま掲載することにした。本書を通読し、この座談会まで読んで頂ければ、編者のその意図がご理解頂けるものと信じている。

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編者紹介

西澤治彦(にしざわ はるひこ)
1954年広島県生まれ。筑波大学大学院人文社会科学研究科博士課程単位取得退学。博士(文学・総合研究大学院大学)。南京大学留学(1985-87)。ハワイ大学大学院留学(1981-82)。現在、武蔵大学人文学部教授。
専攻は文化人類学・中国研究。主な研究テーマは江蘇省の地域社会史、回族・民族問題、東アジアの食事文化など。主な調査地は江蘇省北部の農村(1985〜)、南京市の回族(1992〜)ほか。
著書に『中国食事文化の研究ー食をめぐる家族と社会の歴史人類学』(風響社2009)、『中国映画の文化人類学』(風響社1999)、共編著に『中国文化人類学リーディングス』(風響社2006)、『大地は生きているー中国風水の思想と実践』(てらいんく2000)、『アジア読本・中国』(河出書房新社1995)、共訳書に費孝通著『中華民族の多元一体構造』(風響社2008)、フリードマン著『東南中国の宗族組織』(弘文堂1991)など。


河合洋尚(かわい ひろなお)
1977年神奈川県生まれ。東京都立大学大学院社会科学研究科博士課程修了。博士(社会人類学・東京都立大学)。中山大学留学(2004-2007)。嘉応大学講師(2008-2010)、中山大学助理研究員(2010-2011)を経て、現在、国立民族学博物館グローバル現象研究部准教授。
専門は社会人類学、漢族研究。主な研究テーマは都市景観論、客家の越境民族誌など。主な調査地は広東省(2004〜)及び環太平洋の客家コミュニティ(2011〜)。
著書に『景観人類学の課題―中国広州における都市環境の表象と再生』(風響社 2013)、編著に『全球化背景下客家文化景観的創造―環南中国海的個案』(暨南大学出版社 2015)、『日本客家研究的視角与方法―百年的軌跡』(社会学文献出版社 2013)、論文にCreating Multiculturalism among the Han Chinese: Production of Cantonese Landscape in Urban Guangzhou, Asia Pacific World, 3-1, New York and London: Berghahn, 2012など。
巻頭エッセー・インタビュー


執筆者紹介

末成道男(すえなり みちお)
1938年東京都生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。博士(社会学・東京大学)。聖心女子大学教授を経て東京大学東洋文化研究所教授、定年退任後、東洋大学教授に転任。現在は東洋文庫研究員。
専攻は社会人類学、主な研究テーマは東アジアの社会構造、宗教。主な調査地は日本(1962〜)、台湾原住民 (1965〜)、台湾漢族(1976〜)、韓国(1972〜)、広東(1987〜)、ベトナム(1992〜)。
著書に『仲間』(弘文堂1979原忠彦/清水昭俊と共著)、『台湾アミ族の社会組織と変化』(東京大学出版会1983)、『ベトナムの祖先祭 祀』(風響社1998)、編著に『文化人類学』5号(漢族研究の最前線)(アカデミア出版会 1988)、『文化人類学』8号(中国研究の視角)(1990)、『中国文化人類学文献解題 』(東京大学出版会1995)、『東アジアの現在』(風響社1997)、『中原と周辺』(風響社1999)、『ベトナム文化人類学文献解題』(風響社 2009)、共編著にPerspectives on Chinese society(University of Kent 1995)、『「血縁」の再構築』(風響社2000)、『人類学與「歴史」』(社会科学文献出版社2014)など。

田仲一成(たなか いっせい)
1932年東京都生まれ。東京大学法学部卒業後、東京大学大学院人文科学研究科入学、博士課程単位取得退学。博士(文学・東京大学)。北海道大学、熊本大学を経て東京大学東洋文化研究所教授、定年退任後、金沢大学教授に転任、現在は東洋文庫常務理事。日本学士院会員。
専攻は中国文学、研究テーマは中国演劇史。主な調査地は香港(1978〜)、シンガポール(1982〜)、及び江蘇、安徽、湖南、貴州、雲南、四川などの中国本土各地(1987〜)。
著書に『中国祭祀演劇研究』(東京大学出版会1981)、『中国の宗族と演劇』(東京大学出版会1985)、『中国郷村祭祀研究』(東京大学出版会1989)、『中国巫系演劇研究』(東京大学出版会1993)、『中国演劇史』(東京大学出版会1998)、『明清の戯曲』(創文社2000)、『中国地方戯曲研究』(汲古書院2006)、『古典南戯劇研究』(中国社会科学出版社 2012)、『中国鎮魂演劇研究』(東京大学出版会2016)、編著に『清代地方劇資料集』(東京大学東洋文化研究所1968)、『仁井田陞博士輯 北京工商ギルド資料集』(佐伯有一と共編註 東京大学東洋文化研究所1975〜)、『中国近世文芸論-農村祭祀から都市芸能へ』(小南一郎/斯波義信と共編 東方書店2009)など。

瀬川昌久(せがわ まさひさ)
1957年岩手県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。博士(学術・東京大学)。国立民族学博物館助手、東北大学文学部助教授を経て、現在、東北大学東北アジア研究センター教授。
専攻は文化人類学。主な研究テーマは家族・親族、エスニシティー、中国東南部の地方文化など。主な調査地は香港新界(1983〜)、広東省(1987〜)、海南省(1990〜)など。
著書に『中国人の村落と宗族』(弘文堂1991)、『客家―華南漢族のエスニシティーとその境界』(風響社1993)、『族譜―華南漢族の宗族、風水、移住』(風響社1996)、『中国社会の人類学―家族親族からのアプローチ』(世界思想社2004)、編著に『香港社会の人類学―総括と展望』(風響社1997)、『近代中国における民族認識の人類学』(昭和堂2012)、『客家の創生と再創生』(風響社2012)、『〈宗族〉と中国社会─その変貌と人類学的研究の現在』(風響社2016)、訳書にJ・ワトソン著『移民と宗族』(阿吽社1994)など。

桐本東太(きりもと とうた)
1957年兵庫県生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学、北京師範大学留学(1985-87)、現在、慶應義塾大学文学部教授。
専攻は中国古代史、中国民俗学。主な研究テーマは神話・儀礼・習俗。
著書に『中国古代の民俗と文化』(刀水書房2004)、共編著に『南方熊楠を知る事典』(講談社1993)、翻訳に『中国からみた古代日本』(学生社1992)、論文に「中国に関する新刊書をめぐって」(『文化人類学』8号、1990)「神話に史実を読む」(『言語』第29巻12号、2000)「漢代画像石研究より見た魏晋画像磚の図像解釈についての二・三の憶説」(『アジアにおける「知の伝達」の伝統と系譜』慶應義塾大学出版会、2012)「陝北・山東画像石の類似点をめぐる覚え書き」(『史学』第85巻1-3号、2015)など

第一部 執筆者

長沼さやか(ながぬま さやか)
1976年群馬県生まれ。総合研究大学院大学文化科学研究科博士課程修了。博士(文学・総合研究大学院大学)。中山大学留学(2002-2004)。日本学術振興会特別研究員(PD)(2010-2013)を経て、現在、静岡大学人文社会科学部准教授。
専門は文化人類学・中国地域研究。主な研究テーマは、広東漢族のエスニック集団関係論、アジアにおける漁村形成史研究など。主な調査地は広東省珠江デルタ地域(2002〜)。
著書に『広東の水上居民―珠江デルタ漢族のエスニシティとその変容』(風響社2010)、共編著に『中国における社会主義的近代化―宗教・消費・エスニシティ』(勉誠出版2010)、論文に「祖先祭祀と現代中国―水上居民の新たな儀礼の試み」(川口幸大・瀬川昌久編『現代中国の宗教―信仰と社会をめぐる民族誌』昭和堂2013)など。

阿部朋恒(あべ ともひさ)
1979年大阪府生まれ。首都大学東京大学院社会科学研究科修士課程修了。修士(社会人類学・首都大学東京)。紅河学院留学(2011-2012)、雲南大学留学(2013-2015)、紅河学院訪問研究員(2013〜2015)。現在、首都大学東京大学院社会科学研究科博士課程在籍中。
専門は社会人類学、中国研究。主な研究テーマはチベット・ビルマ語派諸民族の民族誌、東アジアの食文化、嗜好品文化など。主な調査地は青海省(2004〜)、雲南省(2011〜)。
論文に「先住民族からみた『世界遺産』―『紅河ハニ棚田群の文化的景観』の世界遺産登録をめぐって」(河合洋尚・飯田卓編『中国地域の文化遺産―人類学の視点から』、国立民族学博物館調査報告、2016)、「網の上の社交場―中国雲南省の焼烤(シャオカオ)」『季刊民族学』39-3(2015)、「日本民間信仰研究回顧―従反思二分法視点的角度来看」『宗教人類学』第四篇(社会科学文献出版社 2013)など。

奈良雅史(なら まさし)
1982年北海道生まれ。筑波大学大学院人文社会科学研究科博士課程修了。博士(文学・筑波大学)。昆明理工大学留学(2008-2009)、雲南大学留学(2009-2010)。日本学術振興会特別研究員PD(2014-2015)、ボルドー政治学院客員研究員(2015〜2016)を経て、現在、北海道大学メディア・コミュニケーション研究院准教授。
専門は文化人類学、イスラーム研究。主な研究テーマは回族のイスラーム実践など。主な調査地は雲南省(2004〜)。
著書に『現代中国における〈イスラーム運動〉―生きにくさを生きる回族の民族誌』(風響社 2016、第12回国際宗教研究所賞受賞)、共編著に『「周縁」を生きる少数民族―現代中国の国民統合をめぐるポリティクス』(勉誠出版 2015)、共著にRevisiting Colonial and Post-Colonial: Anthropological Studies of the Cultural Interface (Bridge21 Publications 2014)、論文に「動きのなかの自律性―現代中国における回族のインフォーマルな宗教活動の事例から」『文化人類学』80巻3号(2015)、「漢化とイスラーム復興のあいだ―中国雲南省における回族大学生の宣教活動の事例から」『宗教と社会』19号(2013)など。

小西賢吾(こにし けんご)
1980年兵庫県生まれ。京都大学大学院人間・環境学研究科共生文明学専攻研究指導認定退学。博士(人間・環境学・京都大学)。西南民族大学留学(2006-2007)。日本学術振興会特別研究員PD(2011-2014)、京都大学こころの未来研究センター研究員(2014-2015)などを経て、現在、金沢星稜大学教養教育部専任講師。
専門は文化人類学。主な研究テーマは宗教実践からみた地域社会・共同体論、チベットのボン教徒の民族誌的研究など。主な調査地は四川省(2005年〜)と日本(秋田県:2003年〜、石川県:2015年〜)。
著書に『四川チベットの宗教と地域社会―宗教復興後を生きぬくボン教徒の人類学的研究』(風響社2015)、論文にInter-regional relationships in the creation of the local Bontradition: A case study of Amdo Sharkhog, Report of the Japanese Association for Tibetan Studies 60: 149-161, 2014、「再生/越境する寺院ネットワークが支えるボン教の復興」(『地域研究』10(1):73-89, 2010)など。

田中孝枝(たなか たかえ)
1984年埼玉県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。中山大学留学(2009-2011)。現在、多摩大学グローバルスタディーズ学部専任講師。
専門は文化人類学、観光研究。主な研究テーマは中国人観光客を動かすネットワークと仕事、企業組織の民族誌など。主な調査地は広東省(2009〜)など。
論文に「従包装現場到包価遊─以面向日本遊客的福建土楼遊為例」『全球化背景下客家文化景観的創造─環南中国海的個案』夏遠鳴・ 河合洋尚主編、曁南大学出版社、2015、「職場中的“文化”表述―以広東省的日企旅行社為例」『華人応用人類学学刊』(第2巻第2期、華人応用人類学会&Airiti Press Inc. 2014),The Sociality of Tourism from the Visitors’ Society Viewpoint: Japanese Tourism in East and Southeast Asia, In Min HAN and Nelson GRABURN (eds.), Tourism and Glocalization: Perspectives on East Asian Societies, SENRI ETHNOLOGICAL STUDIES, vol.76, National Museum of Ethnology, 2009など。
丹羽朋子(にわ ともこ)
1974年神奈川県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。株式会社イデー勤務(1997-2004)、清華大学美術学院留学(2001-2003)を経て、現在、人間文化研究機構総合人間文化研究推進センター研究員(特任助教)。
専門は文化人類学。主な研究テーマは民間(民俗)芸術、ジェンダー、映像や展示等によるフィールドワークの表現方法など。主な調査地は中国陝西省(2008〜)及び、日本の三陸沿岸の津波被災地(2011〜)。
著書に『窓花/中国の切り紙―黄土高原・暮らしの造形』(下中菜穂との共著、エクスプランテ 2013)、共編著に(100万人のフィールドワーカーシリーズ第13巻)『フィールドノート古今東西』(古今書院 2015)、共編訳に『魯迅の言葉/魯迅箴言』(平凡社/生活・読書・新知三聯書店 2011)など。

梶丸 岳(かじまる がく)
1980年兵庫県生まれ。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程指導認定退学。博士(人間・環境学・京都大学)。貴州大学臨時研究員(2006-2007)、日本学術振興会特別研究員(2009-2011,2011-2014)を経て、現在、京都大学人間・環境学研究科助教。
専門は民族音楽学、言語人類学。主な研究テーマは社会的実践としての掛け合い歌。主な調査地は貴州省(2004〜2010)、秋田県(2009〜)、ラオス(2012〜)。
著書に『山歌の民族誌―歌で詞藻(ことば)を交わす』(京都大学学術出版会 2013)、共編著に『フィールドの見方』(古今書院 2015)、『世界の手触り―フィールド哲学入門』(ナカニシヤ出版 2015)、論文に「中国貴州省の掛け合い歌「山歌」におけるコードスイッチング―言語交替と文化復興のはざまで」『社会言語科学』15(2):pp.58-65(2013)など。

第一部 座談会参加者

稲澤 努(いなざわ つとむ)
1977年東京都生まれ。東北大学大学院環境科学研究科博士課程単位取得退学。博士 (学術・東北大学)。中山大学留学(2004-2007)。現在、尚絅学院大学総合人間科学部准教授。
専門は文化人類学、華南地域研究。主な研究テーマは民族・エスニシティ、人の移動など。主な調査地は広東省(2004〜)。
著書に『消え去る差異、生み出される差異―中国水上居民のエスニシティ』(東北大学出版会、2016)、共編著に『僑郷―華僑のふるさとをめぐる表象と実像』行路社2016年、論文に「汕尾客家与『漁民』的文化景観創造」(夏遠鳴・河合洋尚編『全球化背景下客家文化景観的創造―環南中国海的個案』、暨南大学出版社 、2015)、「現代中国の『漁民』と宗族―広東省東部汕尾の事例から」(瀬川昌久・川口幸大編『〈宗族〉と中国社会―その変貌と人類学的研究の現在』風響社、2016)など。

藤野陽平(ふじの ようへい)
1978年東京都生まれ。慶応義塾大学大学院社会学研究科博士課程単位取得大学。博士(社会学・慶應義塾大学)。中央研究院民族学研究所訪問学員(2005-2007)。現在、北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院准教授。
専門は宗教人類学、東アジア地域研究。主な研究テーマは宗教と癒し、東アジアにおけるキリスト教と植民地主義など。主な調査地は台湾(1999〜)、韓国(2010〜)、日本(山形県遊佐町2003〜、岩手県宮古市2012〜、北部九州2011〜)。
著書に『台湾における民衆キリスト教の人類学―社会的文脈と癒しの実践』(風響社2013)。論文に「東アジア圏内で展開する中華系キリスト教―移動と宗教という観点から」(吉原和男編『現代における人の国際移動』慶応義塾大学出版会2012)、「旧植民地にて日本語で礼拝する―台湾基督長老教会国際日語教会の事例から」(鈴木正崇編『森羅万象のささやき民俗宗教研究の諸相』風響社2015)など。

横田浩一(よこた こういち)
1979年大阪府生まれ。首都大学東京人文科学研究科博士課程単位取得満期退学。修士(社会人類学・首都大学東京)。厦門大学留学(2008-2010)、韓山師範学院外籍研究員(2010-2013)、恵州学院講師(2013-2015)。現在、亜細亜大学国際関係学部非常勤講師など。
専門は、社会人類学、中国研究。主な研究テーマは、広東省潮汕地域の社会・文化、民間信仰など。主な調査地は広東省潮汕地域(2009〜)ほか。
論文に「中国民俗宗教の表象とその社会的影響をめぐる研究動向」(『社会人類学年報』35号 2009年)、「潮汕地区村落的族群標籤与其歴史演変―以潮州市饒平県X村的宗族與移居伝説為例」(『韓山師範学院学報』、第33巻第1期 2012年)、「近年来日本『潮学』研究的回顧與評論」(『潮学研究』新二巻第二期 2013年)、「社会的実践としての宗族復興―広東省東部潮汕地域村落の族譜編纂事業を事例として」(『東北アジア研究』20号 2016年)など。


小林宏至(こばやし ひろし)
1981年東京都生まれ。首都大学東京大学院人文科学研究科博士課程単位取得満期退学。博士(社会人類学・首都大学東京)。厦門大学留学(2008-2010)。現在、山口大学人文学部准教授。
専門は社会人類学、漢族研究。主な研究テーマは宗族研究、世界遺産とメディア表象、客家社会の民族誌的研究など。主な調査地は福建省(2001〜)ほか。
論文に「テクストとしての族譜」『社会人類学年報』37号(2011年)、「福建土楼からみる客家文化の再創生」『客家の創生と再創生』(風響社2012)、Eurasia’s Regional Powers Compared: China, India, Russia.(NewYork: Routledge 2015)、「社会的住所としての宗族」『〈宗族〉と中国社会』(風響社 2016)、「僑郷からの災因論」川口幸大・稲澤努共編『僑郷』(行路社 2016)など。

兼城糸絵(かねしろ いとえ)
1982年沖縄県生まれ。東北大学大学院博士課程環境科学研究科単位取得退学。博士(学術・東北大学)。福建師範大学留学(2005-2006)、厦門大学留学(2009-2011)。現在、鹿児島大学法文学部准教授。
専門は文化人類学。主な研究テーマは、移民母村の社会変化。主な調査地は福建省(2006〜)。
論文にSocial differences in an Emigrant Community in Modern China: A Case Study from Fuzhou city, Fujian Province. (Stratification in Cultural Contexts, Trans Pacific Press、2013)、「客家意象的塑造以及”客家-沖縄関係論”」(河合洋尚編『日本客家研究的視角与方法ー百年的軌跡』、2013)「『移民』が支える神祇祭祀―福建省福州市の僑郷の事例から」(川口幸大・稲澤努編『僑郷―華僑のふるさとをめぐる表象と実像」、2016)、「現代中国の移民と宗族-福建省福州市の事例から」 (瀬川昌久編『〈宗族〉と中国社会―その変貌と人類学的研究の現在』風響社、2016)など。

川瀬由高(かわせ よしたか)
1986年北海道生まれ。首都大学東京大学院人文科学研究科博士前期課程修了。修士(社会人類学・首都大学東京)。南京大学留学(2013-2015)、南京大学外国文教専家(2015)。現在、首都大学東京大学院人文科学研究科博士後期課程。
専門は社会人類学、中国民族誌学。主な研究テーマはコミュニティ論、漢族農村社会論など。主な調査地は江蘇省(2012〜)。
論文に「費孝通の学問的背景―複数の機能主義に就いて」(『知性と創造―日中学者の思考』4号 、2013)、「日本関於漢人農村的『共同体』与『祭祀圏』論―回顧与展望(『中国研究』19期、社会科学文献出版社、2015)、「渦中の無形文化遺産―南京市高淳における祭祀芸能の興隆と衰退の事例から」(河合洋尚・飯田卓編『中国地域の文化遺産―人類学の視点から』、国立民族学博物館調査報告、2016)など。

第二部 執筆者

佐々木 衞(ささき まもる)
1948年、広島県生まれ。九州大学大学院文学研究科博士課程社会学専攻単位修得退学。博士(文学・東北大学)。山東大学研究生(1983-84年)、中国人民大学研究員(1987年)、北京日本学研究センター客員教授(兼任、1997-98年)、日本学術振興会北京研究連絡センター長(兼任、2011-13年)。現在、神戸大学名誉教授。
専攻は社会人類学。主なテーマは、中国地域社会の構成原理と構造変動。
主な調査地は山東省の農 村地域(1983〜)、 河北省の都市近郊(1996〜)、 青島市の新興地域(1997〜)。
主な著書は『現代中国社会の基層構造』(東方書店、2012年)、『全球化中的社会変遷』(科学出版社、2012年)、『中国民衆の社会と秩序』(東方書店、1993年)。編著書は『中国村落社会の構造とダイナミズム』(東方書店、2003年)、『近代中国の社会と民衆文化-―日中共同研究・華北農村社会調査資料集』(東方書店、1992年)など。

田村和彦(たむら かずひこ)
1974年山梨県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。北京大学社会学人類学研究所留学(1999-2001)。現在、福岡大学教授。
主な研究テーマは、農村、地方都市における葬儀の改革、火葬場、生活様式の変化と技術、身体に関する問題、集合住宅と物質文化など。主な調査地は陝西省(1999〜)、江蘇省(2004〜)。
論文に「中国における火葬装置、技術の普及と労働現場の人類学:新たな技術を受容し、環境を再構成する人々に注目して」『中国社会における文化変容の諸相』(国立民族学博物館論集3、韓敏編、風響社、2015)、「民衆の葬儀と国家―近現代中国における人々の葬儀」『変容する死の文化』(国立歴史民俗博物館、山田慎也、鈴木岩弓編、東京大学出版会、2014)、「現代中国における墓碑の普及と「孝子」たち―陝西省中部農村の事例から」『中国における社会主義的近代化』(小長谷有紀・川口幸大・長沼さやか編、勉誠出版 2010)など。

川口幸大(かわぐち ゆきひろ)
1975年大阪府生まれ。東北大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(文学・東北大学)。中山大学留学(2000-2002)。現在、東北大学大学院文学研究科准教授。
専攻は文化人類学。主なテーマは中国における親族、宗教、移動と政治との関わり。主な調査地は広東省(2001〜)ほか。
著書に『東南中国における伝統のポリティクス―珠江デルタ村落社会の死者儀礼・神祇祭祀・宗族組織』(風響社 2013)。共編著に『宗族と中国社会の現在』(風響社 2016)、『僑郷―華僑のふるさとをめぐる表象と実像』(行路社 2016)、『現代中国の宗教―信仰と社会をめぐる民族誌』(昭和堂 2013)、『中国における社会主義的近代化―宗教・消費・エスニシティ』(勉誠出版 2010)など。

劉正愛(りゅう せいあい)
1965年中国遼寧省生まれ。東京都立大学大学院社会科学研究科博士課程終了。博士(社会人類学・東京都立大学)。現在、中国社会科学院民族学人類学研究所教授、中国民族学学会秘書長。
専攻は社会人類学・エスニシティ・民間信仰研究。主な研究テーマは満族のエスニシティ、民間信仰、地域社会史、非物質文化遺産など。
主な調査地は遼寧省(1992〜)、山西省(2010〜)、福建省(2002〜)、山東省(2002〜)ほか。
著書に『民族生成の歴史人類学─満洲、旗人、満族』(風響社2004)、『孰言吾非満族─一項歴史人類学研究』(中国社会科学出版社2015)、編著に『宗教信仰與民族文化』第5号(社科文献出版社2013)。論文に「誰的文化、誰的認同?非物質文化遺産保護運動中的認知困境與理性回帰」、『民俗研究』,2013年第1期など。

佐藤仁史(さとう よしふみ)
1971年愛知県生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(史学・慶應義塾大学)。復旦大学留学(1993-1994)。現在、一橋大学大学院社会学研究科教授。
専門は中国近現代史研究。主な研究テーマは江南デルタ地帯の農村社会史、中国東南部山村と自然環境など。主な調査地は江南デルタ農村(1997〜)及び浙江山間部(2007〜)。
著書に『近代中国の郷土意識―清末民初江南の在地指導層と地域社会』(研文出版2013、第1回井筒俊彦学術賞受賞)、共著に 『嘉定県事―14至20世紀江南地域社会史研究』(広東人民出版社2014)、共編著に『中国農村の民間藝能―太湖流域社会史口述記録集2』(汲古書院2011)、『中国農村の信仰と生活―太湖流域社会史口述記録集』(汲古書院2008)、『太湖流域社会の歴史学的研究―地方文献と現地調査からのアプローチ』(汲古書院2007)など。

総合討論会参加者

聶莉莉(にえ りり)
1954年中国遼寧省生まれ。1986年に来日、1990年に東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学、博士(学術・東京大学)。現在、東京女子大学現代教養学部教授。
専攻は文化人類学・中国研究。主な研究テーマは中国の親族組織、民間信仰、儒教の影響、民衆の戦争記憶、イデオロギーと知識人の社会思想の変遷、少数民族の朝鮮族、など。
主な調査地は遼寧(1987〜)、 福建(1993〜)、 吉林省(1998〜)、 湖南(1998〜)、など。
著書に『劉堡―中国東北地方の宗族とその変容』(東京大学出版会1992)、『中国民衆の戦争記憶―日本軍の細菌戦による傷跡』(明石書店2006/『傷痕―中国常德民衆的細菌戦記憶』中国社会科学出版社2015)、『「知識分子」の思想的転換―建国初期の潘光旦、費孝通とその周囲』(風響社2015)、共編著に『大地は生きている―中国風水の思想と実践』(てらいんく2000)、など。

菊池秀明(きくち ひであき)
1961年神奈川県生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了、博士(文学・東京大学)。中国広西師範大学、広西社会科学院歴史研究所留学(1987〜90)。日中歴史共同研究・古代中近世史部会の日本側委員(2006〜2010)。現在、国際基督教大学教養学部教授。
専攻は中国近代史。主な研究テーマは太平天国史、中国社会史。主な調査地は広西桂平市(1987〜)、台湾、湖南など華南各地(1999〜)。
著書に『広西移民社会と太平天国』(風響社1998)、『太平天国にみる異文化受容』(山川出版社2003)、『ラストエンペラーと近代中国』中国の歴史、10 (講談社2005)。『清代中国南部の社会変容と太平天国』(汲古書院2008)、『金田から南京へ―太平天国初期史研究』(汲古書院2012)、共著に濱下武志等編『岩波世界歴史』20、アジアの近代、19世紀(岩波書店1999)、川島真等編『東アジア近現代通史』1、東アジア世界の近代・19世紀(岩波書店2010)、北岡伸一、歩平等編『日中共同歴史研究報告書』第1巻、古代・中近世史編、勉誠出版2014)など。

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