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文化人類学と現代民俗学

文化人類学と現代民俗学

学生や社会人、そして研究者にも、二つのミンゾクガクの最新動向を分かりやすく伝える、シリーズ第一弾。

著者 桑山 敬己
島村 恭則
鈴木 慎一郎
ジャンル 人類学
民俗・宗教・文学
シリーズ 風響社ブックレット
風響社ブックレット > 関西学院大学 現代民俗学・文化人類学リブレット
出版年月日 2019/03/15
ISBN 9784894894129
判型・ページ数 A5・100ページ
定価 本体900円+税
在庫 在庫あり
 

目次

第一章 文化人類学(桑山敬己)

 一 文化人類学とは
 二 文化とは
 三 文化相対主義
 四 国民・民族・人種
 五 フィールドワーク
 六 日本研究
 七 人類学を生きる
 文献紹介

コラム カルチュラル・スタディーズ(鈴木慎一郎)

第二章 現代民俗学(島村恭則)

 一 民俗学とは何か
 二 民俗とは何か
 三 日本の民俗学
 四 「野の学問」としての民俗学
 五 公共民俗学
 六 世界民俗学
 文献紹介

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内容説明

二つの〈ミンゾクガク〉を/から学んでみよう
「関西学院大学現代民俗学・文化人類学リブレット」は、こうした恵まれた環境の中で、民俗学・文化人類学の教育・研究に携わる教員や研究者が、その最新の研究成果および講義内容を、学生や研究者、そして広く社会に対して、わかりやすく伝えることをめざして刊行するものである。(刊行の辞より)

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    本書よりそれぞれの冒頭部分





第一章 文化人類学(桑山 敬己)

本書の第一章では、文化人類学を学ぶうえでもっとも基本的な事柄に焦点を当てて解説する。それらの事柄とは、「文化」「文化相対主義」「民族」「民族誌(エスノグラフィー)」、および「フィールドワーク」である。また、本書の読者の大多数は日本で初等中等教育を受け、現在、日本の大学で学んでいる学生か、文化人類学に関心のある社会人であろうから、日本を対象とした研究についても言及する。執筆に当たって注意したことは以下の三点である。①日本および世界の文化人類学者の共通理解を提示すること。②従来の概説書では触れられていない重要な点についても解説すること。③隣接分野の民俗学との関連を示すこと。概説書とはいえ、本書は筆者自身の考えに沿って書かれたものである。その意味で、以下の記述は現時点で筆者が考える文化人類学のマニフェストである。一般読者および専門家のご意見・ご批判を乞いたい。(後略)



コラム カルチュラル・スタディーズ(鈴木 慎一郎)

このコラムが話題にするのは、カルチュラル・スタディーズ(cultural studies, 以下CSと略)と名乗るある学的潮流のことである。それは一九五〇年代の英国に直接の起源を持ち、特に一九九〇年代以降には他の国や地域にも広まった。簡単に述べれば、CSは文化を日常生活のさまざまな力関係の中で生じるせめぎ合いのプロセスとして研究してきた。この中の「日常生活」「力関係」「せめぎ合いのプロセス」という三つのポイントを順に取り上げていこう。(後略)


第二章 現代民俗学(島村 恭則)

第二章では、民俗学(現代民俗学)について概説する。民俗学に関する著作は、数多く存在するが、「民俗学とは何か」や「民俗とは何か」といったことがらを、明確に説明した書籍は多くない。ここでは、海外の民俗学の学史や理論もおさえた上で筆者が体系化した「民俗学」の概要を示す。(後略)

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著者紹介
桑山敬己(くわやま たかみ)
関西学院大学社会学部・大学院社会学研究科教授。北海道大学名誉教授。
1955年、東京生まれ。東京外国語大学(英米語学科)、同大学院(地域研究科)修了。1989年、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)にてPh. D(人類学博士)。米国永住権取得。ヴァージニア・コモンウェルス大学助教授、北海道大学文学部教授などを経て、現職。専門は文化人類学。
著書に『ネイティヴの人類学と民俗学』(弘文堂、2008年)、Native Anthropology(Trans Pacific Press、2004)、編著に『日本はどのように語られたか』(昭和堂、2016年)、共編著に『詳論文化人類学』(ミネルヴァ書房、2018年)、『よくわかる文化人類学(第2版)』(ミネルヴァ書房、2010年)、『グローバル化時代をいかに生きるか』(平凡社、2008年)がある。

島村恭則(しまむら たかのり)
関西学院大学社会学部・大学院社会学研究科教授、世界民俗学研究センター長。
1967年、東京生まれ。筑波大学大学院博士課程歴史・人類学研究科文化人類学専攻単位取得退学。博士(文学)。韓国・翰林大学校客員専任講師、国立歴史民俗博物館民俗研究部、秋田大学准教授、東京大学大学院客員教授などを歴任。専門は、現代民俗学、世界民俗学史と民俗学理論。
著書に『民俗学を生きる』(晃洋書房、2020年)、『〈生きる方法〉の民俗誌』(関西学院大学出版会、2010年)、『韓国の怪談』(河出書房新社、2003年)、編著に『引揚者の戦後』(新曜社、2013年)、共編著に『民俗学読本』(晃洋書房、2020年)がある。

鈴木慎一郎(すずき しんいちろう)
関西学院大学社会学部・大学院社会学研究科教授。
1965年生まれ。1996年、立教大学大学院文学研究科地理学専攻博士後期課程修了。博士(文学)。専門は、文化人類学、カルチュラル・スタディーズ、ポピュラー音楽研究。
著書に『レゲエ・トレイン』(青土社、2000年)、共編著に『シンコペーション』(エディマン、2003年)、論文に「「わたしたちみんな、いくらかはダイアレクトを話すのですから」」(真島一郎編『20世紀〈アフリカ〉の個体形成』平凡社、2011年)、共訳書にポール・ギルロイ『ブラック・アトランティック』(月曜社、2006年)、など。


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関西学院大学現代民俗学・文化人類学リブレット 刊行の辞 


 人文社会科学全体の中で、民俗学と文化人類学という二つの領域が併存している状況は、洋の東西を問わず、広く世界中で見ることができる。これは、二つの学問領域が重なり合う面を多々持ちながらも、それぞれ出自や特性を異にしているためである。もっとも、だからといって両者が排他的な関係にあるわけではない。事実、文化人類学が民族学と言われていた時代、日本には「二つのミンゾクガク」という伝統があった。

 その後、民俗学は自文化研究に主眼を置き、文化人類学は異文化研究に特化していったが、グローバル化の影響で自他の境界が曖昧となりつつある今日、両領域はそれぞれの学問的特性を尊重しあい、かつ協働すべきところは協働して、ともに人類文化の究明に向かって進んでいる。民俗を意味するfolkloreという言葉の発祥地であり、近代人類学を主導したイギリスでは、近年改めて両領域の関係が見直されるようになっているが、それは必然的な流れと言えよう。

 関西学院大学社会学部・社会学研究科では、こうした学問的潮流を強く意識して、民俗学・文化人類学の教育・研究を実践している。具体的には、二〇一六年、学部教育改革の一環として、学部内に六つの「専攻分野」を設置した。その中の一つに、「フィールド文化学専攻分野」があり、ここでは民俗学と文化人類学をそれぞれ専門とする専任教員が、「現代民俗学」と「文化人類学」の講義・ゼミを開講している。また、これと対応して、大学院社会学研究科においても、「現代民俗学」と「文化人類学」の講義・ゼミが開講されている。さらに、学部・大学院とも、国内外からこれらの分野の専門家を兼任講師として招聘し、多様な科目を開講している。

 こうして、関西学院大学社会学部・社会学研究科は、民俗学・文化人類学を学部から大学院まで一貫して専門的に学ぶことができる教育・研究機関となっており、また国内における数少ない民俗学の国際的教育研究拠点の一つとしての位置を占めるに至っている。

 「関西学院大学現代民俗学・文化人類学リブレット」は、こうした恵まれた環境の中で、民俗学・文化人類学の教育・研究に携わる教員や研究者が、その最新の研究成果および講義内容を、学生や研究者、そして広く社会に対して、わかりやすく伝えることをめざして刊行するものである。本シリーズが、日本国内はもとより、将来的に外国語への翻訳を通じて、世界中の民俗学・文化人類学の進展に寄与することを心から願っている。

 「関西学院大学現代民俗学・文化人類学リブレット」ジェネラル・エディター 島村恭則・桑山敬己


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《関西学院大学現代民俗学・文化人類学リブレット》シリーズ刊行予定

『文化人類学と現代民俗学』桑山敬己・島村恭則・鈴木慎一郎

  (以下続刊、いずれも仮題。随時刊行)

『現代フォークロア10の視点』荒井芳廣
『アニメ聖地巡礼と現代の宗教民俗学』アンドリューズ、デール
『記憶と文化遺産の民俗学』王 暁葵
『廃墟のフォークロア』金子直樹
『ドイツの現代民俗学』金城ハウプトマン朱美
『景観人類学入門』河合洋尚
『文化人類学・民俗学の〈アート〉』小長谷英代
『韓国民俗学入門』崔 杉昌
『中国の現代民俗学:文化人類学とのかかわり』周 星
『カルチュラル・スタディーズ』鈴木慎一郎
『祭りと地域メディアの現代民俗学』武田俊輔
『温泉のフォークロア』樽井由紀
『布とファッションの人類学』中谷文美
『中国で民俗学を研究する:日本人民俗学者が語る現代中国民俗学』中村 貴
『民俗学者はフィールドで何を見てきたのか』政岡伸洋
『古墳のフォークロア』松田 陽
『文化遺産と民俗学』村上忠喜
『通過儀礼と家族の民俗学』八木 透
『フォークロリズムの民俗学』八木康幸
『まちづくりの民俗学』山 泰幸
『イギリスの民俗学』山﨑 遼
『食の人類学』ヨトヴァ、マリア

(以下、続刊)



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