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台湾における〈日本〉認識

宗主国位相の発現・転回・再検証

台湾における〈日本〉認識

戦後長い歳月の中で様々に語られてきた「他者像としての日本」とその「支配」。台湾人の瞳に映ってきた「日本(人)」像を総括。

著者 三尾 裕子
ジャンル 人類学
歴史・考古・言語
シリーズ アジア・グローバル文化双書
出版年月日 2020/10/31
ISBN 9784894891760
判型・ページ数 4-6・320ページ
定価 本体2,500円+税
在庫 在庫あり
 

目次

新序  (三尾裕子)
特集「台湾における日本認識」序  (三尾裕子)
台湾の歴史の語り方   上水流久彦
台湾東部における漁撈技術と「日本」──近海カジキ突棒漁の盛衰のなかで  (西村一之)
佛光山からみる、台湾仏教と日本との関係  (五十嵐真子)
真宗大谷派による台湾布教の変遷──植民地統治開始直後から台北別院の成立までの時期を中心に  (松金公正) 
植民地下の「グレーゾーン」における「異質化の語り」の可能性──『民俗台湾』を例に  (三尾裕子) 
宗主国の人間による植民地の風俗記録──佐倉孫三著『臺風雑記』の検討  (林 美 容〈上水流久彦・訳〉)
台湾における「日本文化論」に見られる対日観  (黄 智 慧)
あとがき  (三尾裕子)
写真・図表一覧
索引

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内容説明

台湾人の瞳に映ってきた「日本(人)」像を総括。
50年に及ぶ植民地経験がもたらしたものは何か。戦後長い歳月の中で様々に語られてきた「他者像としての日本」とその「支配」。本書は、2005年の国際ワークショップにおいて、多様な事例をもとに報告された、アジアにおける日本の「実像」である。  


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新序(三尾裕子)

本書は、二〇〇六年に刊行された『アジア・アフリカ言語文化研究』七一号に掲載された特集「台湾における日本認識」を単行本として出版したものである。

「特集「台湾における日本認識」 序」にもあるように、特集号のもとになったワークショップは二〇〇四年に行われているから、単行本として出版するまでに、なんと一六年の歳月が経過してしまった。このワークショップの後、私たちの研究は、科学研究費補助金を取得して現地調査を行うことが可能になり、また、何回かのシンポジウムも開催することができた。その成果の一部は、『戦後台湾における〈日本〉』『台湾における〈植民地〉経験』として出版され、本書を含め三冊で一つのシリーズを形成するかっこうとなった。

台湾社会の動きに目を転じれば、二〇〇八年に、民進党から中国国民党への政権交代、また、二〇一六年の中国国民党から民進党への政権交代が行われたため、台湾と中国との政治的、経済的関係は激変した。また、人々の台湾や中国に対する認識もワークショップが開催されたころとは異なるものになっている。このため、たとえば本書に所収のいくつかの論文や、また他の二冊の書籍に所収の論文に見える台湾の人々の政治意識、エスニシティの在り方などは、現在の政治状況に基づいて見たときには、少々違和感を覚える向きもあるものと思われる。この三部作は、歴史認識を扱うものでありながらも、実際には歴史認識とは、それを語ったとき、まさにその時という「現在」を物語ったものであると言えるだろう。そして、その当時の歴史認識は、時を経るに従って、歴史化されていくのである。

本書では、そうした当時という「現在」の歴史認識を記録にとどめるためにも、大幅な内容面の改稿などはおこなわず、字句等の最小限の修正を行うにとどめた。政権交代後の人々の歴史認識の変化の有無、そして変化があったとしてその場合の原因等については、新たな研究が必要であり、その成果は、別の著作において、明らかにしていきたいと考える。

 

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〈執筆者紹介〉(掲載順)

三尾裕子(みお ゆうこ)
1986年、東京大学大学院社会学研究科博士課程中退。博士(学術)。
専攻は文化人類学、東アジア地域研究。
現在、慶應義塾大学文学部教授。
主著書として、『王爺信仰的歴史民族誌:台湾漢人的民間信仰動態』(中央研究院民族学研究所、2018年)など。

上水流久彦(かみづる ひさひこ)
2001年、広島大学大学院社会科学研究科修了。博士(学術)。
専攻は社会人類学、東アジア文化論、地域文化論。
現在、県立広島大学地域基盤研究機構教授。
主著書として、『帝国日本における越境・断絶・残像』(風響社 2020年、共編著)など。

西村一之(にしむら かずゆき)
2000年、筑波大学大学院博士課程歴史・人類学研究科単位取得退学。博士(文学)。
専攻は文化人類学、東アジア地域研究。
現在、日本女子大学人間社会学部准教授。
主著書として、『境域の人類学―八重山・対馬にみる「越境」』(風響社、2017年、共編著)など。

五十嵐真子(いがらし まさこ)
1994年、南山大学大学院文学研究科文化人類学専攻博士後期課程単位取得満期退学。博士(人間文化学)。
専攻は文化人類学。台湾研究。
神戸学院大学元教授。
主著書として、『現代台湾宗教の諸相―台湾漢族に関する文化人類学的研究』(人文書院、2006年)など。

松金公正(まつかね きみまさ)
2001年、筑波大学大学院博士課程歴史・人類学研究科単位取得退学。
専攻は史学、東洋史、中国・台湾宗教社会史。
現在、宇都宮大学国際学部教授。
主編著書として、『現代アジア事典』(文眞堂 2009年、共編著)など。

林 美 容(りん びよう)
1983年、カリフォルニア大学アーバイン校社会科学博士。
専攻は文化人類学、台灣民間信仰、民間佛教、台灣民俗。
現在、台灣中央研究院民族學研究所兼任教授。
主著書として、『漢語親屬稱謂的結構分析』(稻鄉出版社、1990年)など。

黄 智 慧(こう ちえ)
1990年、大阪大学人間科学研究科博士課程修了。専攻は文化人類学・民族学。日本研究、沖縄研究、台湾原住民研究、文化遺産研究。
現在、中央研究院民族学研究所助研究員。
主な論文として「ポストコロニアル台湾における重層構造―日本と中華」『東アジア新時代の日本と台湾』(明石書店、2010年)など。

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