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日本における華僑華人研究

游仲勲先生古希記念論文集

日本における華僑華人研究

華人の企業経営・華人のネットワーク、日本の華僑・華人など、多岐にわたる主題で、今日の華僑・華人研究水準を示す。

著者 游仲勲先生古希記念論文集編集委員会
ジャンル 社会・経済・環境・政治
出版年月日 2003/05/31
ISBN 9784894890374
判型・ページ数 A5・420ページ
定価 本体8,000円+税
在庫 在庫あり
 

目次



      ●第一部 華人経済研究と企業経営

華人経済研究の課題と方法   〈冫余〉照彦 
華人企業を巡る二つの問題──生成・発展要因と企業類型  岩崎育夫
変遷を遂げるか、華人系資本の企業経営  王効平
通貨危機後華人企業のM&A──香港を事例に  朱 炎

      ●第二部 華人とネットワーク

モンゴルの開拓と華人  窪田新一
中国系アメリカ人社会組織の歴史と展望──サンディエゴの場合  曾 纓
世界華商大会の変容と周辺事情  樋泉克夫
グローバル化する中国医学──「民族性」と「近代性」をめぐる曲折  帆刈浩之
華僑送金と僑郷の経済的変化──厦門中国銀行資料を中心として“文革”前から改革までを考察  山岸 猛

      ●第三部 日本における華人

明治期における日中商人の攻防──横浜の商権回復運動を中心に  伊藤泉美
在日中国人の社会組織とそのネットワーク──地方化、地球化と国家  廖赤陽
華僑・華人と教科書問題  松本武彦

      ●第四部 特別寄稿

東南アジア諸国の華僑・華人経済政策分析  汪慕恒
南シナ海における資源開発の展望──華僑・華人資本の役割  周郁民
中国における華僑華人経済研究──焦点となる若干の問題の検討  李国〈木+梁〉

謝辞

游仲勲先生略歴
游仲勲先生業績一覧

執筆者紹介
編集後記

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内容説明

永年、華僑・華人研究をリードしてきた游氏の古希に際し、内外から寄せられた論文集。華人の企業経営・華人のネットワーク、日本の華僑・華人など、多岐にわたる主題で、今日の研究水準を示す。付、游仲勲先生略歴および業績一覧。


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発刊の辞


游仲勲先生は、二〇〇二年十月で古希を迎えられた。高齢化の時代とはいいながら、古希はいまなお人生の喜ばしい節目といえるだろう。これをお祝いして刊行したのが、『游仲勲先生古希記念論文集』、及び『一言集』(非売品)である。


游仲勲先生は華僑・華人研究の重要性にいち早く着目し、一九六九年には、わが国の華僑・華人研究において一時代を画した『華僑経済の研究』(アジア経済研究所)を発表された。以来、一貫して華僑・華人研究の第一線に立ち、斬新な華僑・華人論を次々と精力的に発表する一方、わが国のみならず世界の華僑・華人研究を常にリードされ、世界の学界に大きく貢献されてきたことは、夙に知られたところであろう。


游仲勲先生の学風は、戦前から続く伝統的な華僑研究とは色合を異にし、より深い社会科学的視点から現実を動態的に捉えると共に、科学的・理論的に精緻であることはもちろんだが、専門家だけで形づくる学界のワクを超え、平易なことばで華僑・華人問題の重要性を広く社会に訴える点にあると考える。本論文集巻末に納められた「游仲勲先生業績一覧」が、なによりも、そのことを如実に物語っているだろう。


『游仲勲先生古希記念論文集』は、一九九〇年代初頭以来、游先生が笹川平和財団(笹川日中友好基金事業室)の支援のもとに継続されてきた研究会でご指導を受けたメンバーを中心に、游先生と親交の深い中・米両国の研究者によって執筆されたものであり、『一言集』は游先生の研究生活において交友を結ばれた方々からお寄せ戴いた思い出、華僑・華人研究に対するご提言などを編んだものである。游先生が主宰されるこの研究会は、すでに『華僑・華人経済──日本・アジアにどんな影響を及ぼすか』(ダイヤモンド社 一九九五年)、『ETHNIC CHINESE: Their Economy,Politics and Culture』(The Japan Times 二〇〇〇年)、『21世紀の華人・華僑──その経済力が世界を動かす』(The Japan Times 二〇〇一年)などを刊行したほか、一九九八年五月には、広州において内外の研究者・ジャーナリストなどを集め、中国国際友好聯絡会と協力し「華人と世界経済」をテーマに国際シンポジュームを開催している。これらは、永年にわたる游先生の学術的研鑽がもたらしたものであると同時に、幅広い包容力と行動力とを有する游先生の人柄なかりせば実現しなかったであろうと確信する。


改革・開放に踏み切ることで中国が広大な市場と化して世界経済と結ばれ、政治の対立を超えて進む中台両岸の交流は「三通」をも実現させる勢いであり、東南アジアの華僑・華人資本が相互交流を盛んに進めながら中国市場に参入し、香港・マカオが中国に回帰し、二〇〇八年オリンピックの北京開催が決定し、永年の懸案であった中国、台湾の双方がWTOに加わり、まさに游先生の主張される「中国系のヒト・カネ・モノ」の国境を超えた相互交流が新しい段階に進もうとする時に、游先生が古希をお迎えになられることは、游先生の長い研究の歩みにおける記念すべき慶事であると共に、華僑・華人研究の広範な歴史に照らしても象徴的な出来事といえるだろう。


『游仲勲先生古希記念論文集』は編集の便宜上、全体を四部に分け、第一部・華人経済研究と企業経営、第二部・華人とネットワーク、第三部・日本における華人、第四部・特別寄稿、という構成にした。なお、各論文については執筆者の責任において校正を行い、表記方法等を統一することは敢えて避けておいた。


いま、巻末に収録された游先生の浩瀚な業績を参照しながら、本論文集に収められた論文を読み返すと、改めて游先生の華僑・華人研究の頂の高さと裾野の広さを痛感させられるものである。


永年にわたって華僑・華人研究の先頭に立つと共に、我ら後学を指導されてきた游仲勲先生に改めて感謝の意を表すと共に、古希を機に游先生の益々のご健勝と今後の一層のご活躍をお祈りしたい。


『游仲勲先生古希記念論文集』、および『一言集』にご執筆いただいた各位に対し、心から感謝の意を表したいと思う。我々編集委員会の呼び掛けにいち早く賛同を示され、資金面で多大なご援助を賜った各位に対し、深甚の感謝の意を伝えたい。ご多忙にもかかわらず、汪慕恒教授の中国語論文「関于東南亜各国華僑華人経済政策的分析」を翻訳戴いた劉暁民先生と周郁民教授の英語論文「Perspectives in the Development of South China Sea Resources, with Reference to the Role of Ethnic Chinese Capital」を翻訳戴いた嘉数啓先生に深謝したい。出版事業厳しき情況にもかかわらず、編集委員会の趣旨をご理解戴き、編集・出版の労をとられた風響社の石井雅社長には「ありがとうございました」と伝えたい。また、編集作業全般にわたる煩雑な事務を的確に処理戴いた笹川平和財団・笹川日中友好基金事業室の窪田新一室長と福島栄子さんに深甚の謝意を表したい。


最後になったが、游仲勲先生の古希記念を機に一つになった思いを起点に、わが国の華僑・華人研究における大きな拠点が生まれることを切望して止まないものである。


二〇〇二年十月


游仲勲先生古希記念論文集編集委員会
岩崎育夫、王効平、嘉数啓、
窪田新一、朱 炎、曽 纓、
と照彦、樋泉克夫、山岸猛

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執筆者紹介(執筆順)
〈冫+余〉照彦(トゥ・ツァゥ エン)
1936年台湾生まれ。59年国立台湾大学法学院商学系卒業、69年東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。現在國學院大學経済学部教授。
主な著書・論文に『日本帝国主義下の台湾』(東京大学出版会)、『香港・台湾・大中国』(時事通信社)、『華人経済圏と日本』(編著、有信堂)、『アジアにおける地域協力と日本』(編著、御茶の水書房)、『台湾の選択』(平凡社)、「東アジア経済の発展と華人ネットワーク」(『東アジア経済の構造』青木書店)など。

岩崎育夫(いわさき・いくお)
1949年生まれ。72年立教大学文学部卒業、アジア経済研究所地域研究第一部主任研究員を経て、現在、拓殖大学国際開発学部教授。
主な著書に『シンガポールの華人系企業集団』(アジア経済研究所)、『華人資本の政治経済学』(東洋経済新報社)、『現代アジア政治経済学入門』(東洋経済新報社)、『海の中国』(共著・弘文堂)などがある。

王効平(オウ・コウヘイ)
1962年中国江蘇省生まれ。85年九州大学経済学部卒業、90年同大学大学院経済学研究科修了。(財)国際東アジア研究センター専任研究員を経て、現在北九州大学教授。
主な著書・論文に『華人系資本の企業経営』(日本経済評論社)、『アジア系企業経営の国際化』(東アジア学会)、「中国の改革・開放と華人系資本」(週刊東洋経済)など。

朱 炎(シュ・エン)
1957年中国・上海市生まれ。中国復旦大学経済学部卒業、90年一橋大学大学院修了。富士総合研究所主任研究員を経て、現在富士通総研経済研究所主任研究員。
主な著書に『華人ネットワークの秘密』(東洋経済新報社)、『1997年 変わる香港経済変わらない香港経済』(東洋経済新報社)、『徹底検証 アジア華人企業グループの実力』(ダイヤモンド社)などがある。

窪田新一(くぼた・しんいち)
1954年生まれ。79年東京外国語大学モンゴル語科卒業、87年大正大学大学院博士課程史学専攻単位取得修了。現在亜細亜大学・桜美林大学・大正大学講師。
主な論文に、「商業部門における経済改革」『変革下のモンゴル国経済』第5章(アジア経済研究所研究双書438、1993年)、「Securing Mongol-made Raw Materials, process and Export」『Report of JICA Mongol project』(JICA、1996年)、『国別援助検討会報告書(モンゴル)』(共著、国際協力事業団、1997年)、「モンゴル語版『蒙古喇嘛教史』研究(7)」『大正大学綜合佛教研究所所報』(第23号、2002年)、『モンゴル佛教史研究 一』(監修、ノンブル社、2002年)などがある。

曾 纓(ツェン・イン/そう・えい)
1984年、中国浙江大学科学実験儀器工程学系卒業後、コンピューター・エンジニアとしての勤務を経て来日。99年国際基督教大学比較文化研究科博士課程修了。学術博士(国際基督教大学)。現在、国際基督教大学・慶應義塾大学・早稲田大学非常勤講師。
主な著書・論文に『From Gold Mountain to the New Millennium: Chinese American Studies at the 21st Century』(共著・Alta Mira Press)、『21世紀の華人・華僑』(共著・ジャパンタイムズ)、「中国系アメリカ人社会の現状──中心のない連合体」(『日中社会学研究』第8号)などがある。

樋泉克夫(ひいずみ・かつお)
1947年生まれ。70年中央大学法学部卒業、香港中文大学新亜研究所修了、中央大学大学院文学研究科博士課程後期単位取得。現在愛知県立大学外国語学部教授。
主な著書・論文に『タイ・実力者とその人脈』(外務省南東アジア第一課)、『華僑系経済人に関する若干の考察』(外務省南東アジア第一課)、『華僑コネクション』(新潮社)など。

帆刈浩之(ほかり・ひろゆき)
1964年生まれ。95年東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。98年東京大学大学院人文社会系研究科博士(文学)学位取得。現在川村学園女子大學文学部助教授。
主な論文に「香港東華医院と広東幇ネットワーク:民弁華人医院の展開」(飯島渉編『華僑・華人史研究の現在』汲古書院、1999年)、「香港における中国伝統医学の制度化をめぐって──1999年『中医薬条例』成立の背景」(『中国研究月報』54-5、2000年)などがある。

山岸 猛(やまぎし・たけし)
1944年生まれ。73年拓殖大学大学院国際経済研究科修士課程修了。徳山大学経済学部教授を経て、現在秀明大学総合経営学部教授。
主な著書・論文に『中国農業機械化運動の展開についての一考察』(日本国際問題研究所)、『現代中国の計画経済』(共著、ミネルヴァ書房)、『華僑・華人経済圏の動態分析──ミクロ分析』(国際東アジア研究センター)など。

伊藤泉美(いとう・いずみ)
1962年生まれ。84年横浜市立大学文理学部卒、お茶の水女子大学大学院人間文化研究科博士課程単位取得修了。現在横浜開港資料館調査研究員。
主な著書・論文に『開国日本と横浜中華街』(大
修館書店)、「横浜華僑・華人研究の成果と課題」『華僑・華人史研究の現在』(汲古書院)、「横浜華僑社会の形成」『横浜開港資料館紀要』第9号などがある。

廖赤陽(リョウ・セキヨウ)
1960年中国・福建省生まれ。82年厦門大学歴史学部卒業、国立華僑大学講師を経て日本留学へ。97年東京大学大学院アジア文化専攻東アジア歴史社会専門コース博士課程修了、博士(文学)。東京大学東洋文化研究所非常勤講師を経て、現在武蔵野美術大学造形学部教授。
主な著書・論文に『長崎華商と東アジア交易網の形成』(汲古書院、2000年)など。

松本武彦(まつもと・たけひこ)
1955年生まれ。85年筑波大学大学院博士課程歴史・人類学研究科単位取得退学。現在山梨学院大学法学部教授。
主な著書・論文に『王敬祥関係文書目録』(共編著・福建会館)、「中華民国僑商統一連合会の成立と性格」(『中国近現代史の諸問題』国書刊行会)、「神戸日華実業協会の成立について」(『年報近代日本研究17』山川出版社)などがある。

汪慕恒(ワン・ムーホン)
1927年インドネシア生まれ。原籍は台湾台南市。51年厦門大学経済学部卒業、51~58年同大学教員、59年以後同大学南洋研究所(現南洋研究院)で研究活動に従事、副教授を経て教授、長く同所の所長を務め、全国政治協商会議代表、台湾民主同盟中央委員なども務めた。
主な著書に『当代シンガポール』『当代インドネシア』(ともに四川人民出版社)、『東南亜華人企業集団研究』(厦門大学出版社)、『東南亜五国経済』(共著、北京人民出版社)、『東南亜国家経済発展戦略研究』(共著、北京大学出版社)、『マレーシアの『新経済政策』と華人経済』(中国華僑出版公司)など。

周郁民(Yu-min Chou)
Professor Emeritus, Business Economics and Finance, University of Michigan-Dearborn
Born 1928 in Taiwan, B.A., 1954, Ph.D., 1960 University of Illinois, Urbana-Champaign. His writings have appeared as journal articles, chapters in books, and in conference proceedings on subjects ranging from international trade, customs union theories, and economic integration. His current research interest includes a focus on the political economy of international relations that pertain to the security of the Pacific Region.

李国〈木+梁〉(リ・グォリァン)
1942年中国・湖北省生まれ。65年武漢大学歴史学部卒業。現在厦門大学南洋研究院教授。中国華僑歴史学会常務理事、中国東南アジア研究会常務理事、福建華僑歴史学会副会長、中国太平洋学会理事などを兼任している。84年長崎大学、95・96年名古屋大学、96年アジア経済研究所各客員研究員。筆名郭梁
主な著書に『東南亜華僑華人経済簡史』(経済科学出版社)、『東南亜華僑通史』(共著、福建人民出版社)、『華僑華人与中国革命和建設』(共著、福建人民出版社)、訳書『華僑資本の形成と発展』(福建人民出版社)、『東南亜華僑経済簡論』(厦門大学出版社)など。

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