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蒙古源流

内モンゴル自治区オルドス市档案館所蔵の二種類の写本

蒙古源流

モンゴル人が日常的に語る年代記『エルデニン・トプチ(蒙古源流)』。オルドス市档案館所蔵の二つの版本の写真版、解説を付す。

著者 楊 海英
ジャンル 書誌・資料・写真集
シリーズ モンゴル学研究基礎資料
出版年月日 2007/11/20
ISBN 9784894898721
判型・ページ数 B5・214ページ
定価 本体3,200円+税
在庫 在庫あり
 

目次

序文 楊海英

Emuneki Uge. Se. Narasun

写本A

写本B

付録 オルドス市档案館蔵簡介(中文・モンゴル文)

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内容説明

今もモンゴル人が日常的に語る年代記『エルデニン・トプチ(蒙古源流)』は、歴史を生きた形で受け継ぐ貴重な文献である。本書はその写本の中で、オルドス市档案館所蔵の二つの版本を写真版で収録し、解説を付したものである。


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本書より


……このように、年代記『エニン・トプチ』のやそれにまつわる「歴史」はオルドス・モンゴル人たちのあいだで生きたかたちでうけつがれている。また『年代記』もそのさまざまな語りの中で多くの写本を産み育ててきた。このように語ることと記述されることが混然となった文化を考えれば、オルドス・モンゴル人たちの歴史認識が年代記を誕生させたといいかえても全くかまわないといえよう。
……
1991年春から故郷で調査研究をはじめた私は、ずっと『エルデニン・トプチ』をさがしもとめている。私はまずMostaert師がかつてオルドスから入手し、Harvard-Yenching InstituteのScripta Mongolicaのシリーズとして発表したA本とB本、それにC本という3種の『エルデニン・トプチ』の原本を手にいれようと努力してみた。


Mostaert師が公表したA本は、ウーシン旗のナリーン・ゴール河の近くに住むドガールジャブという貴族の写本を1910年に書き写したものであった(Mostaert 1956:61)。ドガールジャブの子孫に会えば年代記の所在もわかるだろうと思った。しかし、ドガールジャブには男子がなく、娘たちも遠くへとついでいったため、なんの情報もえられなかった。かつてドガールジャブが住んでいた邸宅は「ドガールの塞子(砦)」とよばれ、ナリーン・ゴール河のほとりに廃墟としてのこっていたが、いまや開発で跡地も確認できなくなった。


オトク旗の役人で、メーリン・ジャンギ(梅倫章京)をつとめていたトゥメンウルジという人物が所有していた『エルデニン・トプチ』をMostaert師が同じ旗のトゥブデレゲルに1918年に書写させたのが、いわゆるB本である。こちらもトゥメンウルとブデレゲルを手がかりにさがしてみたが、成功しなかった。


……
2006年夏、内モンゴル自治区で調査していた私は「オルドス市档案館」館長のトプチン(Tobcin, 道布慶)氏と、長く档案関係の仕事にたずさわってきたセ・ナラソン(Se. Narasun)氏と再会した。二人ともウーシン旗の出身である。われわれが相談しあった結果、オルドス市档案館に収蔵されている2種類の『エルデニン・トプチ』を影印のかたちで公開し学界に届けることになった。


……
以下では、ごく簡単にオルドス市档案館に入っている年代記の特徴について述べておこう。本書にモンゴル語の序文を寄せているセ・ナラソン氏によると、2種の『エルデニン・トプチ』はいつ、誰が、どこから収集し、档案館に入れたかなどの詳しい情報はのこされていないという。


A本:
档案館の整理番号はB-364-2626で、表紙には档案館の整理者によるつぎのようなモンゴル語と漢語による書き込みがある。


……
大きさは30.2cm×11.4cmで、計79葉ある。黒褐色の毛頭紙で、毎葉に27~32行の文字が葦ペンで書いてある。葉の左側にモンゴル語でページ番号が書いてある。筆跡は同じオルドスのオトク旗から発見されたアラク・スゥルデ本と似通っているような印象を受ける。とくに、「前写引き尾」(uruγsil)は、アラク・スゥルデ本の前半の書風と同様に、細く長くなっている。……

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編者紹介
楊海英(Yang Haiying)
1964年、中国内モンゴル自治区オルドス地域生まれ。モンゴル族。
1987年、北京第二外国語学院大学アジア・アフリカ語学部日本語科卒業。同大学助手を経て1989年春来日。1995年総合研究大学院大学博士課程修了、文学博士。
現在、静岡大学人文学部助教授。
主な著書: 『草原と馬とモンゴル人』(2001年、日本放送出版協会)、『オルドス・ モンゴル族オーノス氏の写本コレクション』(2002年、国立民族学博物館・地域研究企画交流センター)、『モンゴルとイスラーム的中国 民族形成をたどる歴史人類学紀行』(2007年、風響社)。

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