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中国出身留学生のライフストーリー 67 新刊 これから出る本

農村から都市、そして日本へ

中国出身留学生のライフストーリー

農村出身、欧米の大学を卒業した人、自分の居場所探しなど、まさに十人十色。統計ではわからない中国出身学生のリアルな姿を描く。

著者 新井 凜子 著
ジャンル 人類学
社会・経済・環境・政治
シリーズ ブックレット《アジアを学ぼう》
出版年月日 2026/10/25
ISBN 9784894890725
判型・ページ数 A5・72ページ
定価 本体800円+税
在庫 未刊・予約受付中
 

目次

プロローグ

一 中国出身留学生をめぐる社会的背景

   はじめに
   本書の構成
   中国社会と留学
   中国の農村と国内移動
   小結

二 中国出身学生と日本留学

   日本語専攻出身者――ルウシーの場合
   居場所探し――シンユエの場合
   欧米を経由して日本へ――ジュンジエの場合
   中国社会に「変化をもたらしたい」――ハンヤンの場合
   小結

三 農村出身者の日本留学

   農村に残った子ども――ユンヤオの場合
   移動する子どもたち――マイマイとユーシェンの場合
   両親を説得する――チュンリンの場合
   両方に家を持つ――シャオリーの場合
   小結

エピローグ

註・参考文献

あとがき

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内容説明

ミクロな視点から描き出すそれぞれの生い立ち
「農村出身の青年もいれば、欧米の大学を卒業した後にわざわざ日本にやってくる人、自分の居場所を探して日本に来た人など、その経験は十人十色である。そうしたライフストーリーを通じて、統計ではわからない中国出身学生のリアルな姿を読者にお伝えしたいと思う。」(プロローグより)


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      本文より





 来日留学生のうち、現在もっとも人数が多いのは、中国からの人々である。こうした留学生たちについては、メディアでもたびたび取り上げられ、「リアル」な姿として報道されている。確かに、メディアに登場する学生たちも、中国人留学生像の一側面ではあるだろう。一方で、これまで私が交流してきた留学生たちとは、どこかズレを感じることも多い。加えて、メディアの報道は大抵が日本へ来た直接の理由や、日本での生活などにフォーカスしている。しかしそれは、留学生たちがこれまで生きてきた人生のほんの一部分にすぎない。

 私はこれまで、日本と中国の両方で、のべ五〇人が参加したフォーカス・グループのインタビュー、そして個別に四八人に対してライフストーリーの聞き取りを実施してきた。フォーカス・グループは、少人数の参加者がテーマに沿って自分の考えや経験を語り合いながら進める形式のインタビューである。ライフストーリーを聞き取った四八人のうち、三一人は日本への留学経験がある。本書では、主にライフストーリーの語りを基にしながら、フォーカス・グループで語られた内容も参照する。

 参加者たちは、一九九〇~二〇〇〇年代生まれの学生および卒業生である。ライフストーリーでは、生まれてから現在に至るまでの教育経験を中心に、その人の「人生の物語」を詳細に聞いてきた。本書では、参加者たちがどのような生い立ちで、どのような道筋をたどって日本にやって来たのか明らかにする。中でも、これまであまり取り上げられてこなかった農村部出身者にも焦点を当て、出生から現在に至るまでの経験を描く。留学生ひとりひとりの人生というミクロな視点から、統計上の数字では見えてこない、またメディアの報道とも異なる、中国出身留学生像を明らかにする。

 本書の構成

 第一節ではまず中国からの留学生をめぐる社会的背景を整理し、それぞれのライフストーリーをより深く理解するための予備知識を紹介する。

 第二節では、参加者たちのライフストーリーから、中国の若者たちがどのような背景のもとで留学を選び、その経験をどのように意味づけているのかを見ていく。

 第三節では、農村出身者に焦点を当て、都市部出身の学生とは異なる出発点に立つ人々が、留学を通じてどのような進路や生き方を模索しているのかを描き出す。これまであまり注目されてこなかった農村出身者の語りを通して、より多様で複層的な留学生の経験をたどってみたい。


(中略)


 日本語専攻出身者の語りとして、ここではルウシーのライフストーリーを紹介する。

 

 ルウシー [両親は]教育を非常に重視しています。まさに、他に何もしなくてもいい、でも勉強はしなければならない。家事はしなくてもいい、特長がなくてもいい、でも勉強はよくできないといけない。

 
 ルウシーは、山東省出身の女性で、インタビュー当時(二〇二三年)は日本の大学で修士課程二年生であった。両親は彼女の教育を非常に重視していたという。高考の結果、省内の大学の日本語専攻に進学した。

 
ルウシー:
 実は、志望校を書いていた時は、この大学には行きたくなかったんです。父が、家族がこの大学に出願させたくて、それで書きました。それに、私は他の省に行きたくて、山東省にはあまり残りたくなかったんです。でも、家族が山東省に残ってほしいと思っていたので、その大学を書きました。本当はもっと志望校を書きたかったのですが、家族が第二志望までしか書かせてくれなくて、それで山東省に残りました。

筆者:
 では、なぜ山東省に残りたくなかったんですか。

ルウシー:
 他の場所を見てみたかったのと、その大学が家からすごく近かったんです。別の市にあるとはいえ、大型バスでたった四〇分です。すごく近いんです。私は家から少し離れたくて、両親は小さい頃からちょっと厳しかったので、そういう環境から離れて、もうちょっと自由になりたかった。





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著者紹介
新井凜子(あらい りんこ)
大阪大学大学院人間科学研究科修了。博士(人間科学)。現在、静岡大学国際連携推進機構特任助教。主な論文に、「中国人学生の語りに見る留学と日本:留学先としての日本の位置づけ」(『日中社会学研究』32、2025年)、“Women on the move: students from rural China in Japan (re)negotiating gender expectations and family relations”(Inter-Asia Cultural Studies 26 (2), 2025)などがある。

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