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スタートアップガイド

過去を分析・共有するためのオープンな研究環境を目指し、資料のテキストデータ化・コード化の作業に必要な知識を身につける入門編。

著者 宮本 隆史
ジャンル 歴史・考古・言語
シリーズ ブックレット《アジアを学ぼう》 > ブックレット〈アジアを学ぼう〉別巻
出版年月日 2011/12/25
ISBN 9784894897537
判型・ページ数 A5・64ページ
定価 本体800円+税
在庫 在庫あり
 

目次

一 はじめに
二 食材をそろえる──資料の複写
三 包丁をそろえる──作業環境の用意
四 食材の仕分け──ファイルとディレクトリの操作の基本
五 下ごしらえ──デジタル画像からテキストファイルをつくる
六 料理本番──テキストの修正
七 仕上げ──テキストに構造と意味を与える
八 盛り付け──データの公開へ
九 賞味する──分析の方法

読書案内

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内容説明

 

コンピュータで歴史を共有する。過去を分析・共有するためのオープンな研究の環境を目指し、資料のテキストデータ化・コード化の作業に必要な知識を身につけるための入門編。

*********************************************

 

一 はじめに

 

この本の目標

この本は、デジタル形式の資料とデジタル機器を歴史の研究に活用するための、基礎的な作業の手法を解説するガイドブックです。どのようなツールを使えば何を解決できるのか、という基本的なことがらを学習しましょう。本書を読むために必要な知識としては、コンピュータの起動と終了、マウスを使ったファイル操作、ブラウザによるウェブ閲覧、簡単な文書作成ができるという程度を想定しています。この小冊子ですべてを解説しつくすことはできませんが、登るべき「山」のとば口までご案内できればと思います。本書を読み終わったあとは、巻末の読書案内を手がかりにして、さまざまなマニュアルや教材を読んで次の段階に進んでください。

この本では、歴史研究の作業を、コンピュータというツールを用いた実習を通じて学びます。コンピュータによる効率のよい分析・共有を可能とするために、資料の全文テキストデータ版を作成するという目標を置きます。コンピュータに文書を適切なかたちで与えてやることで、人間の眼だけでは不可能なことを機械の力で実現するための基盤をつくります。具体的作業としては、紙に書かれた文書をデジタル画像化することでコンピュータに「見える」状態にし、さらにテキスト形式にすることで字面を「読める」状態にして、最終的にマークアップ言語と呼ばれる言語を使って意味と構造を書き込んでやることで「解釈」できるようにします。こうした作業の過程でさまざまなツールの使い方を学んでいきます。これから行なうテキスト化やコード化の作業は、非常に地道なものではありますが、その積み重ねの先には広い見通しが開けるはずです。なお、この本では実習を通じて学んでいきますので、インターネットにつながったコンピュータの前で、手を動かしながら読むことをお勧めします。

 

この本を読んでもらいたいひと

この本は、つぎのような読者を念頭に置いています。

まず、コンピュータに苦手意識を持つ人文系の人びと。分厚い教科書を読む気にはなれないし、何から手をつけてよいかわからないというひとを念頭に、この本は書かれています。人文系のひとにとって比較的取り組みやすい材料として歴史資料をとりあげ、さまざまなテクニックを学びながら分析用のデータをつくっていきます。実践を通じてスタートを切ってしまえば、見通しがよくなり楽しみながら勉強を進められるようになるはずです。

本書は一方で、教室での「歴史=暗記科目」という印象のために、歴史自体が嫌いになってしまったひとにも向けられています。じつのところ、過去のデータから有益な情報を引き出すという歴史研究の課題は、すべてのひとが日々実践していることでもあります。どのような情報も、わたしたちの脳が受けとる前に、過去のどこかの時点で作られていなければならないのですから。この本では、過去の情報としての歴史資料を具体的に処理していくことで、暗記科目とは異なる歴史研究のイメージを持ってもらいたいと思います。受験のために暗記するような年表は、作業に役立つかぎりで情報を整理するためのフォーマットのひとつにすぎません。年表の内容を忘れてしまったら、もちろん年表を見ればいいのです。

この本は、初心者向けのスタートアップガイド、いわば「入門のための入門」の書です。あなたが腕に覚えのあるカメラマンで、UNIXを操作できるエンジニアやプログラマであれば、この本は必要ありません。もくじとこの節「はじめに」、そして最後の「賞味する──分析の方法」をながめて、「歴史研究者はこういうことをしたいのだな」ということを確認してもらえれば十分です。あとはあなたの能力を歴史研究コミュニティのためにぜひ生かしてください。歴史研究の方法論について参考になる文献は、巻末の読書案内で紹介しています。

 

この本で学べること

この本で学べるのはつぎのようなことです。

歴史資料の複製をつくり全文テキスト化するまでの手順

デジタル複写のための機器の選びかた・使いかた

UNIX系オペレーティングシステムのシェル(BASH)の初歩的な使い方

次の段階に進むための勉強のしかたと参考情報

逆に、つぎのような情報は提供できません。

歴史研究の方法についての概説

コンピュータの操作法についての詳細な解説

プログラム言語やマークアップ言語の詳しい解説

芸術的な写真の撮り方

資料の全文テキスト化と、UNIXのシェルについては、なぜそれを学ぶのかを説明しておきましょう。

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著者紹介
宮本隆史(みやもと たかし)
1979年、京都市生まれ。
東京大学大学院総合文化研究科博士課程
日本学術振興会特別研究員DC
主な論文に「植民地統治と監獄制度─19世紀中葉の海峡植民地における囚人の管理」(『南アジア研究』19号、2007年)、「19世紀英領海峡植民地における監獄制度、1820─70年代」(『年報地域文化研究』10号、2007年)などがある。
http://miyamotolog.com

 

 

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