4 もっとアジアを学ぼう
研究留学という生き方
ひとつの地域に住み込み、フィールドワークや資料収集に没頭する生活。単なる学生生活や海外赴任では見えない、ディープな体験とは。
著者 | 水口 拓寿 編 胎中 千鶴 編 |
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ジャンル | 人類学 歴史・考古・言語 文化遺産・観光・建築 社会・経済・環境・政治 |
シリーズ | ブックレット《アジアを学ぼう》 > ブックレット〈アジアを学ぼう〉別巻 |
出版年月日 | 2012/10/25 |
ISBN | 9784894897571 |
判型・ページ数 | A5・56ページ |
定価 | 本体700円+税 |
在庫 | 在庫あり |
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目次
一 留学を通して出会ったもの
1 新たな研究手法との出会い(岩城考信)
2 葬儀が教えてくれたこと (胎中千鶴)
3 ベトナム留学を通して出会ったもの(俵寛司)
二 留学先との繋がりは続く
1 住宅に刻まれる一九世紀後半から二一世紀後半に至る家族の歴史(岩城考信)
2 台北孔子廟と私の一〇年 (水口拓寿)
三 留学成果を活かす
1 永遠の「観察者」としての「調査者」(岸保行)
2 大地震と台湾社会 (胎中千鶴)
おわりに(水口拓寿)
内容説明
一年から数年にわたりひとつの地域に住み込み、フィールドワークや資料収集に没頭する生活。単なる学生生活や海外赴任では見えない、ディープな体験とは。多分野のOBが語る。
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はじめに(水口拓寿)
もっとアジアを学ぼう。学ぶためには留学に出かけよう。 「留学」と一口に言っても、この語の意味するところは様々である。夏休みや春休みを使っての語学留学もあれば、正規の学生として海外の学校に学び、幾年もかけて学位を得るという留学もある。この本が皆さんにお勧めしようとするのは、そのどちらでもない。大学院生やポストドクターなどが自分で計画を立て、その計画を実現するために渡航先へ赴き、現地の大学や研究所などに、訪問研究者や外国人研究生の資格でお世話になる。そうして、一年や二年という期間を区切ってフィールドワークや資料収集に没頭するという、いわば「研究のための留学」である。時には現地で学会発表をしたり、論文を世に問うたりする機会もあるだろう。以下、この本の中で「留学」という言葉を断りなく用いる際には、この種の留学を指すものと思っていただきたい。
さて、この本は留学計画の立て方や、渡航先や受入研究機関の選び方、留学資金の見つけ方などを手ほどきするものではない。近年の大学院生やポストドクターは、短期の海外渡航を繰り返すことが比較的容易になった一方、より長期にわたる「研究のための留学」は敬遠するようになったと聞くことがある。そうした中にあって私たちは、留学という形で海外に暮らすことの面白さや、「専門家の卵」と呼ばれる時期に留学経験を持つことの価値を、あえて今こそ文字のかたちで、あなたにお伝えしてみたいと企てた。この本を執筆した私たち五人は、いずれも財団法人松下国際財団(現・公益財団法人松下幸之助記念財団)の松下アジアスカラシップ(現・松下幸之助国際スカラシップ)によってアジアに留学した後、現在は大学で研究と教育に従事する者たちである。留学の体験や意義というのは、まことに十人十色なものであって、たった五人で語れることは、ほんの僅かな個別事例に過ぎない。しかし、それで構わないと考えている。五人それぞれが「わたしのアジア留学」を、自分の言葉でお話しすることによって、この本を読んで下さったあなたが、「あなたのアジア留学」を設計しようと思い立って下さるならば、私たちにとってこれほど大きな幸いはない。
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著者紹介
水口拓寿(みなくち たくじゅ)
武蔵大学人文学部准教授。
2000年度松下アジアスカラシップにより台湾の中央研究院民族学研究所に留学。本シリーズではこれまでに『風水思想を儒学する』(2007年)を執筆。
胎中千鶴(たいなか ちづる)
目白大学外国語学部教授。
1998年度松下アジアスカラシップにより台湾の中央研究院歴史語言研究所に留学。本シリーズではこれまでに『植民地台湾を語るということ―八田與一の「物語」を読み解く』(2007年)を執筆。
俵 寛司(たわら かんじ)
考古学者。
2001年度松下アジアスカラシップによりベトナムのベトナム国家大学ハノイ校ベトナム研究・文化交流センターに留学。本シリーズではこれまでに『境界の考古学―対馬を掘ればアジアが見える』(2008年)を執筆。
岩城考信(いわき やすのぶ)
呉工業高等専門学校建築学科准教授。
2004年度松下アジアスカラシップによりタイのチュラーロンコーン大学社会調査研究所に留学。本シリーズではこれまでに『バンコクの高床式住宅―住宅に刻まれた歴史と環境』(2008年)を執筆。 岸 保行(きし やすゆき) 新潟大学経済学部准教授。2005年度松下アジアスカラシップにより中国の香港大学日本研究学系に留学。本シリーズではこれまでに『社員力は「文化能力」―台湾人幹部が語る日系企業の人材育成』(2009年)を執筆。