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たけしまに暮らした日本人たち 27

韓国欝陵島の近代史

江戸時代の日本人が「竹嶋」と呼び、明治以降は日朝の漁民らが共住した欝陵島。「竹島」から90キロの島の知られざる歴史。

著者 福原 裕二
ジャンル 歴史・考古・言語
シリーズ ブックレット《アジアを学ぼう》
出版年月日 2013/10/25
ISBN 9784894897588
判型・ページ数 A5・64ページ
定価 本体800円+税
在庫 在庫あり
 

目次

はじめに
一 欝陵島の概観
 1 欝陵島の現在・そこへの誘い
 2 前史
二 1900年代の欝陵島
 1 日本人定住の経緯と朝鮮人の居住状況
 2 日本人社会の状況
 3 日本人と朝鮮人との関係及び通商・交通・商業
 4 産業
三 植民地朝鮮期の欝陵島
 1 人口変化の特徴
 2 生活の変化
 3 産業
 4 流通・運輸の状況と島内行政
四 欝陵島友会と『欝陵島友会報』
 1 島友会の活動
おわりに

欝陵島における日本人社会年譜
あとがき

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内容説明

もう一つの「竹島」
江戸時代の日本人が「竹嶋」と呼び、明治以降は日朝の漁民らが共住、今や韓国でも高所得の離島となった欝陵島。「竹島」から90キロほどの島の知られざる歴史をひもとく。

 

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筆者の暮らす島根県浜田市の郷土資料館(浜田市浜田郷土資料館)には、江戸時代末期に日本人が竹嶋へ「渡海致すまじく候」として掲げられた高札が展示されている(図2)。意外に思われるかも知れないが、この高札により渡海を禁じられた「竹嶋」とは、現在、日韓両国の間で領有権が争われている竹島(韓国名:独島)のことではない。江戸時代の日本人は、現在の竹島を「松島」あるいは「松嶋」と呼び慣わし、本書で取り上げる韓国欝陵島のことを「磯竹島」あるいは「竹嶋」と呼称した。したがって、この高札は、いわゆる「天保竹嶋一件」を契機に、異国の欝陵島等へ日本人が赴くことを禁じる目的で掲げられたのである。この事実を裏返せば、欝陵島は、江戸時代末期に日本人が渡海する可能性を秘めた、魅力的な場所であったということになろう。
……この後、欝陵島は、日本による朝鮮半島植民地化(韓国併合)を契機に、大韓帝国から朝鮮総督府の管轄下に置かれることとなった。これを前後して、日本人居住者数は一〇〇〇人を突破し、植民地朝鮮期を通じて約五〇〇〇人~一万人の朝鮮人居住者とともに共棲が営まれ、水産業を中心に発展(近代化)をみることになる。さらに、日本の敗戦(朝鮮半島の解放)後も、朝鮮(韓国)人居住者数は増加の傾向をたどり、一九七〇年代前半から半ばにかけては、約三万人の住民を擁するまでになり、日本人が遺したハード(インフラストラクチャー)とソフト(水産業の技術など)の一部を活用しつつ、加えて行政・住民の内発的な努力によって、「韓国で一人当りの所得は一番高い」離島を形成するに至った。
このように、日本人(とくに山陰地域の人々)と歴史的に関係深い沿革を辿ることのできる欝陵島であるが、存外その近現代における史的展開については、研究の状況が著しいとは言えない。もっとも、欝陵島の歴史研究には、ある一定の蓄積があることも事実である。これは欝陵島が明治時代以前に、断続的な経済活動などを通じて、山陰地方の人々によく知られた存在であったこと、また、韓国では欝陵島の属島として竹島が位置づけられており、竹島領有権問題に付随する形で、欝陵島の歴史研究が行われてきたからである。しかし、こと植民地朝鮮期を中心とする欝陵島の歴史については、多くの言及がなされないままに推移してきた。

 

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福原裕二(ふくはら ゆうじ)
1971年、岡山県生まれ。
広島大学大学院国際協力研究科博士後期課程修了。博士(学術)。
現在、島根県立大学大学院北東アジア開発研究科・総合政策学部准教授。同大学北東アジア地域研究センター副センター長。
主な著書に、「竹島/独島研究における第三の視角」(『交渉する東アジア』、風響社、2010年)、「北朝鮮の核兵器開発の背景と論理」(『核拡散問題とアジア』、国際書院、2009年)、『日本・中国からみた朝鮮半島問題』(共編、国際書院、2007年)などがある。

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